健康法に関する本やTV番組は巷に溢れていますが、それは、特定の人だけに効果のあった体験に基づくものであったり、医師の臨床経験によるものであったりします。
最近読んだ「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」という本は、ハーバード大学で博士号を取得し、UCLAで内科学の助教授を務める津川友介医師が書いた「科学的根拠」に基づく健康情報を紹介した本です。
基本的には、ハーバード大学などで行われた膨大な信頼のできる研究成果をベースに書かれていることが、画期的であると思います。
科学的に証明された健康な食事とは?
本書の結論は、以下の文章に要約されています。
数多くの信頼できる研究によって本当に健康に良い(=脳卒中、心筋梗塞、がんなどのリスクを下げる)と現在考えられている食品は、 ① 魚、 ② 野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)、 ③ 茶色い炭水化物、④ オリーブオイル、 ⑤ ナッツ類の 5 つである。逆に、健康に悪いと考えられているのは、 ① 赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない。ハムやソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)、 ② 白い炭水化物、 ③ バターなどの飽和脂肪酸の 3 つである。
このうち、「茶色い炭水化物」とは、玄米、蕎麦(蕎麦粉の含有量が多くて小麦の割合が少ないもの)、全粒粉を使った茶色いパンなど、精製されていない炭水化物のことを指し、「白い炭水化物」とは、白米、うどん、パスタ、小麦粉を使った白いパンなどの精製された炭水化物のことを意味するとのことです。
これについては、特に真新しい話ではなく、類書でもよく指摘されることですが、本書ではこの結論について、研究結果による科学的な説明がなされているのが特徴的です。紹介されているデータの多くには、根拠となる論文の名前が注記されていて、根拠を確認することもできます。
玄米食と白米食の違い
玄米を食べていると、しばしば「なんでわざわざ玄米なんて食べるの?そんなに健康になりたいの?」と言われることがあります。
私の場合、何も我慢して玄米を食べているのではなく、玄米のほうが美味しいと感じるから食べるのであって、その上、健康にも良いなら、あえて白米を食べる理由がないと思っています。
本書によると現時点で分かっている玄米食の調査結果から分かる傾向は以下の通りです。
- 動脈硬化の病気(心筋梗塞、脳卒中)になるリスクが 21% 低い。(玄米は血糖値が上がりにくいため)
- 1 日 50 gの白米を玄米に置き換えることで糖尿病のリスクを 36% 下げる。(白米を食べる量が多い人ほど、糖尿病になる確率が高い)
- 白米の食べすぎは糖尿病のリスクを上げるものの、がんのリスクを上げることはない
- 白米やラーメンのように精製された炭水化物(白い炭水化物)は体重増加につながるが、玄米や蕎麦のように精製されていない炭水化物(茶色い炭水化物)を食べても体重が増えにくい。
まとめると、玄米食に変えることによって、動脈硬化、糖尿病のリスクが下がり、体重増加が抑制される傾向があることがわかります。
また、玄米は胚乳、胚芽、ぬかの 3 つを含み、食物繊維やその他の栄養成分を摂取することもできます。
魚と赤い肉の影響
魚と赤い肉の関係に関してもエビデンスに基づく傾向が紹介されています。
魚と健康への影響
魚が健康に良いことはよく知られていますが、その傾向は以下の通りです。
- 魚をよく食べる人は、そうでない人に比べ心筋梗塞により死亡するリスクが 36% 低下した。
- 乳がんになるリスクが 5% 下がる。また、大腸がんや肺がんのリスクを下げることも報告されている。
赤い肉と健康への影響
赤い肉とは、牛肉や豚肉のように見た目が赤い肉のことで、鶏肉は「白い肉」とされ、これには含まれません。赤い肉の摂取による健康への影響は以下のようなものがあります。
- 加工肉の摂取量が 1 日あたり 50 g増えるごとに脳卒中を起こすリスクが 13% 増加する。
- 牛肉や豚肉などの赤い肉や、ハムやソーセージなどの加工肉は、大腸がんのリスクを上げる。
まとめ
この本では赤肉、白い炭水化物などが「体に良くない」ということをエビデンスとともに紹介しています。これを100%正しい教義のごとく信仰して、私は今後絶対に赤肉や白い炭水化物は口にしないかというと、そんなことはありません。肉は大好きですし、玄米を食べる選択肢が無いことも多いからです。それでも、ある食事を取ることで将来身体に起こりうることの傾向を知っておくことは大変有益であると思います。
なお、どの本にも共通しますが、この本で紹介されていることが「100%正しい」というわけでは、勿論ないと思いますので、その点は懐疑心を持ちながら読むのが良いかと思います。興味のある方はぜひ読んでみてください。