ブラジルでビールが初めて作られたのは、1853年だったそうです。日本史でいうと、黒船来航の年ですね。奇遇にも日本人が初めてビールを作ったのも同じ1853年だったようです。ペリーが来航したときに宴会の席で出されたビールを飲んで、ビールの味を気に入った蘭学者の川本幸民という人が醸造したのが日本人が初めて作ったビールとして記録されています。
ところで、ブラジルには沢山のビールのブランドがありますが、有名なブランドの一つに「ボヘミア(BOHEMIA)」というブランドがあります。ボヘミアと言えば、現在のチェコの西部地方を指す名称なので、ブラジルではじめて「ボヘミア」のビールを見たときは輸入ビールかと思ったんです。
実際には、ボヘミアは輸入ビールではなくて、ドイツ人移民がブラジルで始めたビールのブランドです。ボヘミアが誕生したのは1853年で、このブランドこそが、現在もブラジル人に愛され続けているブラジルで最も古いビールのブランドなのです。
ボヘミア:名前の由来
ボヘミアが醸造されていた工場は、当時国産ビール帝国工場(Imperial Fábrica de Cerveja Nacional)と言う名前で呼ばれており、また、ビール自体は「金の液体(ouro líquido)」という名前をつけられていました。しかし、消費者は同社の製造したビールのことを非公式に「ボヘミア(BOHEMIA)」と呼んでいたそうです。その理由は定かではないのですが、おそらく創業者のエンリケ・クレマーがボヘミア地方出身だったことに由来しているとする説があります。
ボヘミアの歴史
ボヘミアは、ブラジルに電話が普及する20年ほど前の1853年から醸造されており、今なおブラジル人に愛されているビール・ブランドです。
ボヘミア(BOHEMIA)はリオデジャネイロ州のペトロポリス(Petrópolis)で、ドイツ人移民のエンリケ・クレマー(Henrique Kremer)によって初めて醸造されました。当初は小規模生産で一ヵ月に6,000本が醸造されていたと言います。主な市場は地元のペトロポリスの他、リオデジャネイロ市も含まれていました。創業当初は、原料不足、技術不足、熟練した技術者の不足という困難がつきものでした。
創業当初の商品の配送は、馬車や手押し車などで行われていました。ボヘミアは美味しさと品質の高さから評判になり、ブラジル皇帝ドン・ペドロ二世(在位1831~1889年)のお気に入りになったそうです。
発売当初、ボヘミアはドイツのビール製造法に従い、色が黒く、強い苦みが特徴的でした。時代の変遷とともにボヘミアはブラジル人の味覚に合わせて現在の苦味の少ない味に変化してきています。
1961年にはアンタークティカ社がボヘミアを買収し、現在はブラジル飲料大手のアンベブ社(AmBev)のブランドの一つとしてブラジル人に愛されています。