ブラジルの上院は2016年5月12日午前6:30、評議開始から21時間もの長い時間を経て、ジウマ大統領の罷免を承認しました。78名の上院議員のうち、55名が賛成票、22名が反対票を投じました(議長のヘナン・カリェイロスさんは投票せず。)
今後180日間の職務停止期間に開かれる弾劾裁判で上院議員の3分の2に当たる54人が賛成すると、ジウマさんは失職し、8年間の公職追放となります。この場合、2003年のルーラ前大統領から続く労働党(PT)政権時代が終焉することになります。
で、ジウマ大統領が罷免される理由は何なの?
ジウマ大統領が罷免されるのは、ブラジル経済が停滞して失業率が上がっているからでも、国民の人気がないからでもありません。国民の感情としては、そちらの方が大きいのかもしれないですが、理由は別にあります。
罷免の理由は、ジウマ政権が行っていたとされる、「ペダラーダス・フィスカイス(PEDALADAS FISCAIS)」という粉飾会計にあります。ペダラーダス・フィスカイスというのは、直訳すると「国庫によるペダル踏み」という意味です。この名前が付けられた背景を以下、ご紹介します。
ペダラーダス・フィスカイスって何?
「ペダラーダス・フィスカイス(以下、「ペダラーダ」と言います。)」を理解するためには、まずブラジルの社会保障のしくみを理解する必要があります。ボルサ・ファミリア等の社会保障プログラムに資金を流すためには、財務省(Tesouro Nacional)から、公的金融機関(ブラジル銀行、カイシャ・エコノミカ、BNDES)及び民間銀行、INSS(国家社会保障院)などの国営企業に資金を送金する必要があります。
2013年頃から政府はこの送金のいくつかを“意図的に”遅らせていたことがわかっています。これは、歳出削減目標を達成し、財政赤字を出さないようにするための方策だったんです。
社会保障の支払いに回さなくて済んだ資金は基礎的収支を増やすために利用されました。一方で、誰がこの社会保障のカネを支払っていたかと言えば、ブラジル銀行などの金融機関が財務省の代わりに支払っていたというんですね。
このように、財務省が社会保障に回す資金の支払いを遅らせて粉飾会計をした一連のしくみを「ペダラーダ」といいます。2012年から2014年だけで400億レアルもの資金操作が行われたと言われています。
ブラジル銀行やカイシャ・エコノミカでは、ジウマ政権のために自己資金により社会保障のためにお金を支出していたんですが、これは、金融機関が政府にお金を貸しているのと同様の取引とみなされ、財政責任法36条に違反する行為なんです。
2014年9月、公共省(o Ministério Público)が、会計検査院(TCU)に対して一連の取引に関する調査を要請し、2015年になって、過去数年にわたって「ペダラーダ」が行われていたことが明らかになりました。
「ペダラーダ」は昔から行われてきた?
ジウマ政権の弾劾請求において、ジウマ政権は「ペダラーダ」について、どのように弁護しているのでしょうか。ジウマ政権の説明は大きく三つに分けることができます。
- 「ペダラーダ」はジウマ政権が始めたものでは無く、昔から行われていた。カルドーゾ政権も「ペダラーダ」をやっていたと主張。
- 17以上の州政府が同じスキームを使っている。もし、これでジウマ大統領が罷免されるのであれば、多くの政治家が罷免されなければならない。
- 社会保障サービスの資金支払を代行させたのは、政府が金融機関から融資を受けたと解釈するのではなく、社会保障サービスの一環としてとらえるべきで、財政責任法36条を適用する事項ではない。
要するに、皆やっているのに、なぜ私だけが責任を取らされるのか、ということですね。確かに、経済がうまく回って入れば、責任を取らされることは無かったのかもしれないですね。結局、ジウマ大統領が罷免に追い込まれた本当の理由は、やはりブラジル経済の停滞であると思います。
「ペダラーダ」というのは、「国庫によるペダル踏み」という意味だと冒頭に書きましたが、日本語に意訳すれば、まさに「国の自転車操業」ということになりますかね。
参考情報
politize