ポルトガル語に残る外来語の影響

ブラジル・ポルトガル語豆知識

以前、ポルトガル語は、ローマ帝国の拡張に伴いラテン語が普及したことに起源を有するという記事を書きました。ポルトガル語はラテン語をベースとしていますが、他にも多くの言語から影響を受けています。

ローマ人がイベリア半島にやってくる以前、イベリア半島にはケルト人、ギリシャ人、フェニキア人などが住んでいました。また、ローマ人以降では、ゲルマン民族とアラブ人がイベリア半島を支配した時期がありました。

この記事では、ラテン語以外からポルトガル語が受けた影響についてご紹介します。

ケルト語の影響

ケルトというと、アイルランドやスコットランドなどのケルト音楽を連想なさる方も多いかと思いますが、ケルト人はかつて西ヨーロッパ広域に住み、ローマを脅かす存在にもなりました。

ローマ人はケルト人が住む地域のことを「ガリア」と呼びました。カエサルが記した『ガリア戦記』が有名です。

ポルトガル語は、ケルト語から以下のような影響を受けているようです。
Cavalo(馬):caballusに由来
Manteiga(バタ):manticaに由来
Carro(車):carrusに由来

発音への影響としては例えば以下のような影響があります。
水:aquaからáguaへの変化
悪い:maleからmal
良い:beneからbem
海:mareからmar

ゲルマン語の影響

5世紀からはゲルマン民族(ゴート族など)が侵略し、彼らの言葉がポルトガル語に影響を及ぼしました。

ゲルマン民族の侵略について、詳しくは、こちらの記事にも書いております。

5分で分かるポルトガル王国誕生の歴史(前編)

2017.09.05

ゲルマン語から取り入れられた語彙としては以下のようなものがあります。特に軍事用語でポルトガル語に取り入れられたものが多いようです。

Guerra(戦争)
Bando(群れ)
Trégua(休戦)
Dardo(ダーツ、投げ矢)
Galope(《馬術》ギャロップ)

アラビア語の影響

ゲルマン人の後にやってきたアラビア語の影響も受けています。これに関しては、以下の記事をご参照ください。

アラビア語に影響を受けたポルトガル語

2017.05.18

アフリカの影響

大航海時代に入り、ポルトガル人がアフリカ、アジアに進出すると、進出先からの影響も受けています。

例えば、アフリカから影響を受けた言語には以下のものがあります。

Farofa(マンジョッカ芋の粉)
Fubá(トウモロコシ・米の粉)
Zumbi(ゾンビ)
Iemanjá(イエマンジャ=海の女神)
Caçula(末っ子)
Quiabo(オクラ)
Moleque(青二才、小僧)
Chimpanzé(チンパンジー)
Banana(バナナ)

トゥピ・グアラニ語などの影響

ブラジルは、ポルトガル人が進出した最大の植民地です。ご存知の通り、ポルトガル人の到来以前から、この地には先住民が暮らしており、多くの言語が話されていました。

ポルトガル語は、トゥピ・グアラニ語をはじめとする先住民の言語から語彙を得ています。

以下は先住民の言語に由来する語彙で、現在はポルトガル語として使用されている語彙の例示です。

Abacaxi(パイナップル)
Pipoca(ポップコーン)
Beiju(タピオカクレープ)
Cupuaçu(クプアス)
Mandioca(マンジョッカ)
Tucupi(トゥクピー)
Pupunha(プップーニャ)
Maniçoba(マニソバ)
Cacau(カカオ)
Caipira(カイピーラ)
Cajá(カジャー)
Canoa(カヌー)
Capoeira(カポエイラ)
Carioca(カリオカ)
Macaxeira(マカシェイラ)
Maceió(マセイオー)
Tapioca(タピオカ)

え?半分も知らない?そんな方はぜひブラジル北部を旅行してみてください。

先住民の語彙は地名として残っているケースが多いです。最も有名なものは、「イグアス=大きな水」という名前ですが、それ以外にも挙げればキリがないほどあります。

また、食べ物に関しても、先住民の語彙をそのまま利用しているケースが多いです。その理由は、単純に本国ポルトガルにその食べ物が無かったので、先住民の語彙を使用せざるを得なかったからだと思います。

日本語の影響

1908年にブラジルに渡った日本人移民は、ポルトガル語に日本語の語彙を加えました。

敢えてここで紹介するほどではないと思いますが、ポルトガル語になった日本語の語彙をいくつか例示します。

Yakissoba, Sushi, Sashimi, Lamen, Soba, Shimeji, Saquê, Caqui
⇒ブラジル人に人気料理を2つ挙げるとしたら、間違いなくヤキソバと寿司が挙がります。また、まだあまり一般的ではないですが、カレーも受けが良いです。

Aiquidô, Caratê, Jiu-jitsu, Judô, Sumô
⇒合気道は知らないブラジル人からはAi que dor(うわっ、めっちゃ痛い)と揶揄われることがあります。柔道と空手は、日本における「ヨガ」と同じくらい浸透しています。

Ofurô
⇒ブラジル人の入浴は基本的にシャワーのみです。バスタブつきの場合は「お風呂」と呼ぶことがあります。

他にも沢山ありますが、キリがないのでこの辺にしておきます。

英語の影響

国際語である英語や米国発のサービス名は、ポルトガル語でもそのまま利用されています。ただし、発音はポルトガル風になっています。

Deletar(削除する)
Clicar(クリックする)
⇒英語の動詞がそのままポルトガル語として利用されていますが、ポルトガル語のルールに従って動詞の活用がされる点が面白いです。

例)Clique este botão. (そのボタンをクリックして)

Modem(モデム。発音は「モデミ」)
Mouse(マウス。発音は「マウジ」)
Market Share(市場占有率。発音は「マーケッチ・シェア」)
PodCast(ポッジ・キャスチ)

フランス語の影響

同じラテン語系のフランス語の語彙で、ブラジルで一般的に使用されているのは以下のようなものがあります。

petit gâteau(プチガトー)
purê(ピューレ)
batom (口紅)
boné (つば付き帽子)
boutique(ブティック)
chique (シック)
moda (モード)
sutiã (ブラジャー)
bidê (ビデ)
cachê (キャッシュ)
carnê (肉)
souvenir(お土産)
avenida (大通り)
boate (ナイトクラブ)
chalé (シャレー)
creche (幼稚園)
garagem (駐車場)
guichê (チケット売り場)
marrom (茶色)
balé (バレー)
chefe (上司)
garçom (ウェイター)
greve (ストライキ)

イタリア語の影響

ご存知の通りブラジルには多くのイタリア移民が流入していますので、当然イタリア語の影響も受けています。イタリア語が語源の語彙は例えば次のようなものがあります

Pizza(ピザ)
Carnaval(カーニバル)
Capuchino(カプチーノ)
Mortadela(モルタデーラ)
Macarrão(パスタ)
Alarme(アラーム)
Artesão(職人)
Poltrona(肘掛け椅子)
Palhaço(道化師)
Pastel(パステル)
Bandido(強盗)

普段何気なく耳にするポルトガル語の語彙も、調べてみるといろいろな歴史があって面白いですね。