日本のスーパーにおいては、牛乳はチルドコーナーに置かれているのが一般的ですが、ブラジルで牛乳を買おうとチルドコーナーを探しても、あるのはヨーグルトのみで冷えた牛乳がどこにも見当たりません。
諦めて店内をうろうろしていると牛乳らしきものを発見するのですが、どの商品も常温保存されているうえに、品質保持期限を見ると半年ほど先の日付が書いてあったので、ちょっと気味が悪くて手が伸びませんでした。
後になって、この商品が「ロングライフ牛乳」と呼ばれるものであり、ブラジルの家庭で消費される牛乳のおよそ9割を占める商品であるという事が分かりました。
冷蔵庫で冷やしてから飲んでみたのですが、日本で飲んでいた牛乳と味に大きな違いは感じませんでした。常温で6カ月も保存できるということは、この白い液体の中にはさまざまな保存料が入れられていて、健康を害するのではないかと当初は考えてしまいました。しかし、調べたところによると、ロングライフ牛乳は「殺菌工程」が日本で一般的に飲まれている牛乳と異なるだけで、保存料は添加していないということが分かりました。
ロングライフ牛乳とは何か
ロングライフ牛乳(Leite Longa Vida)は、超高温殺菌=UHT(temperatura ultra-alta)と呼ばれる製法で製造された商品です。ロングライフ牛乳の製造過程において、牛乳は145 ºCまで過熱された鉄板の上を2秒通過します。たった2秒?と思ってしまいますが、牛乳に含まれるバクテリアを全て殺菌するには十分な温度、時間なのだそうです。
また、紙容器にアルミ箔を貼り合せ、光と空気から遮断され、無菌状態で充填されることで、ロングライフ牛乳は常温で4~6カ月もの期間保存することが可能になります。保存料などの添加物は使用しておらず、無菌状態にしているだけなので、当然ながら開封後は冷蔵庫に入れて、数日中に飲みきってしまわなければなりません。
なお、栄養価は普通の牛乳と変わらないようです。
バイーア州の内陸部で製造されているオシャレな牛乳「レイチッシモ(めっちゃ牛乳)」
原材料
無添加ではなく、クエン酸ナトリウムが保存料として入っているようでした。
ブラジル人家庭におけるロングライフ牛乳普及率は87%!
伯国ロングライフ牛乳協会の情報によると、2008年時点でブラジル人家庭におけるロングライフ牛乳普及率は87%となっています。
ロングライフ牛乳以外の13%のシェアは農家が自分の乳牛から採った牛乳を家で加熱して飲む場合や、粉ミルクなどのシェアを差しているのではないかと思います。
ブラジルにおけるロングライフ牛乳の歴史
伯国ロングライフ牛乳協会の情報によると、ロングライフ牛乳がブラジルにやってきたのは、ヨーロッパでその技術が発明されてから10年後の1972年のことでした。まずはリオデジャネイロで導入されましたが、1991年までは市場シェアは低いままでした。その理由は、牛乳生産量自体が少なかったこと、製造設備が整備されていなかったことなどが原因だったようです。
1991年以降、徐々にロングライフ牛乳の価値が市場で認められるようになってきました。保存が容易であること、成分調整をした様々な種類の牛乳が誕生したことなどがきっかけとなったそうです。
1991年時点ではロングライフ牛乳の市場シェアは4.4%に過ぎなかったのですが、たった17年の間にシェアを大きく伸ばし、2008年には87%のシェアを誇るほどに成長しました。ブラジル以外でも、ヨーロッパや南米でも多くの国でロングライフ牛乳のシェアは70~90%を占めています。
まとめ
ロングライフ牛乳は、超高温殺菌により無菌状態を保つことによって常温保存が可能となっていますが、保存料などの添加物は基本的には入っておらず、かつ、栄養価も普通の牛乳と変わらないようです。添加物の有無は商品によって異なるようですので、購入時にご確認ください。