ブラジルは、人種の違いに関しては比較的寛容な国ですが、LGBTに対する理解度はあまり高くない印象を受けます。LGBTに対しては、ブラジルのみではなく、ラテンアメリカ全体としても寛容度は低いことが分かるニュースがありました。
おかま発言でブラジルサッカー協会が罰せられる
FIFAは、9月6日にマナウスのアマゾニア・アリーナで行われたW杯予選のブラジル対コロンビア戦で、ブラジル人サポーターが「同性愛嫌悪」の態度を取ったとして、ブラジルサッカー協会(CBF)に対して約2百万円の罰金を科しています。CBFがFIFAに罰せられたのはこれが初めてのことです。
問題は、コロンビア代表のゴールキーパーであるダビド・オスピーナ選手(David Ospina)が守備を行っているときに、ブラジル人サポーターの多くが、「オカマ野郎(bicha)」と叫んだ態度でした。
おかま発言で罰せられたのは、主にラテンアメリカ諸国
ブラジル以外でも「同性愛嫌悪」発言により以下の国が罰金を科せられています。(金額は概算です。)
国名 | 罰金(百万円) |
チリ | 6.6 |
ホンジュラス | 6.6 |
アルバニア | 5.1 |
エルサルバドル | 4.6 |
イタリア | 3.0 |
メキシコ | 3.0 |
ペルー | 3.0 |
パラグアイ | 2.5 |
アルゼンチン | 2.5 |
カナダ | 2.0 |
チリ代表のサポーターは、「同性愛嫌悪」の常習犯であったため、2017年3月にチリのサンチアゴで開催予定だったW杯予選(対ベネズエラ)が中止になるという憂き目にあいました。
「bicha」の他にも、ラテンアメリカ諸国では「puto」という卑語が良く使用されます。元来は、「puta(売春婦、ふしだらな女)」という単語なのですが、語尾を「o」に変えることによって、「ホモセクシャル」を暗示する言葉として使われています。特に、味方チームが攻めている時に、相手チームのゴールキーパーに投げかけられることが多いようです。
おかまに対して不寛容な実例―サファダォン事件
会社の同僚で、ウェズリー・サファダォンに似た若者が居ます。彼は、サイドを刈り上げてトップの髪をゴムで結んで後ろにたらすという、ウェズリー・サファダォンに似た髪型をしています。
入社した時は、普通の髪型だったのですが、徐々に髪を伸ばして現在のヘアスタイルにしました。彼が髪を伸ばして、ゴムでしばるようになってから、心無いブラジル人が陰で「あいつは、おかまなんじゃないか。」との噂を立てるようになりました。
彼には女性の恋人もいますし、女装したり、女性のような喋り方をしたりするわけでは無いのですが、髪が長いという事実だけで、そのような噂のたねにされてしまったのです。
おかまに対して不寛容な実例―アヒルTシャツ事件
学生の頃、日本の友人から誕生日プレゼントとしてユニクロの「アヒルの絵が描いてあるTシャツ」をもらいました。ちょっと可愛らしいデザインではありますが、日本だったら男性が来ていても全然問題なさそうなTシャツです。色は黒でした。
ある時、そのTシャツを着ていた時に、Tシャツを見たブラジル人の友人から「おっ、お前、“フランゴ(おかま)”みたいな服きてるな~」とからかわれてしまいました。この服装がフランゴになるのであれば、日本の若者のファッション雑誌などを見せたら、「日本はフランゴだらけだな。」と言われてしまいそうです。日本ではジャニーズ事務所のアイドルのような男がモテるといったら、信じてもらえないかもしれません。
ブラジル文化の特徴
ブラジルには、男は「男らしくたくましくあるべき」という価値観があります。そして、その価値観から外れる者に対する不寛容も存在します。LGBTに対する差別は日本でも存在しますが、ブラジルと日本で決定的に異なるのは、日本人は思ったことを口にしないのに対して、ブラジル人はズバズバと言ってくる点にあるでしょう。
それに加えて、ブラジル人は、仲のいい人に対してネガティブなあだ名を付けて呼ぶことがあります。ぼくは痩せ形体形なのですが、仲のいいブラジル人から、しばしば「magrinho(ガリガリくん)」と呼ばれます。もしくは、単に「jappa(ジャップ)」と呼ばれることもあります。言っている本人は、馬鹿にする意味で言っているのではなさそうです。
ダビド・オスピーナ選手を「オカマ野郎(bicha)」と呼んだブラジル人も、オスピーナ選手を傷つけようとしたのではなく、単に試合に熱が入りすぎて、そのような発言をしてしまったのかもしれません。結果として、オスピーナ選手の名誉を毀損していることには変わりないですが…。そもそも、オスピーナ選手が同性愛者なのでしょうか? Gay or STRAIGHT.comというスゴイ名前のサイトによると、ゲイの確率は73%なんだそうです。なお、同サイトによるとフレディ・マーキュリーは84%、ウェントワース・ミラー(海外ドラマ:プリズンブレイクの主人公)は83%でした。
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もう一つ、ブラジルメディアでしばしば問題になるのは、マッチョ思想(machismo)です。ブラジルでは、男性目線で作られた広告がSNSで炎上することがしばしばあります。
また、ブラジルには、ゲイを表す言葉が沢山あります。それだけ、差別されることが多いのではないかと思います。
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