ブラジル人は、三度のめしより「カビの生えた」ビールが大好きです。
チーズならまだしも、カビの生えたビールというのは想像が難しいですが、ブラジル人は例外なくカビの生えたビールが好きと言っても過言ではなく、日本人がレストランなどでカビの生えたビールを注文すると、「お前わかってるじゃねえか」と親しみを示してくるギャルソンもいます。それではカビの生えたビールがどういうものなのかご紹介していきます。
セルヴェージャ・モッファーダ(Cerveja mofada)
「カビの生えた」ビールをポルトガル語で書くと、「セルヴェージャ・モッファーダ(Cerveja mofada)」となります。「セルヴェージャ(Cerveja)」は「ビール」という意味で、「モッファー(Mofar)」というのが「カビが生える」という意味の動詞で、形容動詞にすると「モッファーダ(Mofada)」となります。
過冷却のビール
ブラジル人ほどビールを冷やすことに情熱を燃やす民族には、これまでお目にかかったことがありません。ブラジル人は過冷却(*)のビールを好んで飲みます。
*液体が凝固しないで凝固点より低い温度まで冷却された状態
ビールびんが過冷却されると、下の写真のようにびんの表面に霜が付着します。この様子が「カビが生えている」ように見えるため、これを「セルヴェージャ・モッファーダ(Cerveja mofada)」と呼ぶのです。一方で、ぬるくなってしまったビールは「熱いビール(cerveja quente)」と呼ばれ、価値がないものとみなされてしまいます。
Aqui em casa é assim! #mofada #cerveja #cerveza #beer #bier #cerveza #birra #amomuito #brahma #rotulohistorico pic.twitter.com/BHQcx3XT5V
— Rodrigo Maluf (@rodrigomaluf) 2016年9月30日
なんのことはない、カビの生えたビールとは、びんに霜が付いた状態のことを指しているのです。
左官の向うずね、新婦のヴェール
ついでながら、他にも霜の付着した状態のビールの別名としては、左官の向うずね(Canela de pedreiro)、新婦のヴェール(véu de noiva)と言ったものがあります。ブラジル人らしいネーミング・センスですが、「左官の向うずね」という表現には、差別的な意味合いを感じますね。この名前は、良く冷えたビールびんが、黒人の血を濃く引いた左官の向うずねに粉が沢山付いた状態に似ていることに由来しています。
Dia ta perfeito pra aquela cerva igual canela de pedreiro pic.twitter.com/VvpQeGvNRp
— Jéssica (@JMairinque) 2016年11月4日
冷えたビールの飲み方
ブラジルでは、350ml入りのビール小瓶のことをロンギネッキ(Long Neck)と呼んでいます。ちょっと洒落たレストランに行くと、バケツに氷を詰めたものに、このロンギネッキを4~5本差した状態で出してきます。

「カビの生えた」ビールにするには、もうひと手間が必要です。ロンギネッキと氷の詰まったバケツの上から、塩とアルコールを適量ふりかけるのです。氷に塩を加えると、氷の融ける速度が加速し、まわりの熱を奪う効果があります。また、氷にアルコールを加えると、凝固点降下が起こり温度が下がります。
ビール専用の冷蔵庫
ブラジルのレストランでは、ビール専用の冷蔵庫が客の見える場所に置いてあることがよくあります。また、ご丁寧に冷蔵庫にはデジタル表示の温度計が付いており、冷蔵庫内の温度が確認できるようになっています。たいていの場合、マイナス2~3度に設定されています。
Vendo #Geladeira #Skol #Semi #Nova
R$3,000 #.. https://t.co/0dIOhoE3Fs pic.twitter.com/fDuZdngnrr— Negociar! anúncios (@negociar_org) 2016年8月23日
「カビの生えた」ビールを提供するには経験と技術が必要です。というのも、ビールが過冷却の状態になっているため、びんを手で持った時の体温やちょっとした衝撃がきっかけで凍ってしまい、中身が溢れだしてくることがあるからです。
ブラジルのレストランにおいては、しばしば過冷却のビールが凍ってしまうという事態が出来しますが、この場合には他のビールと取り換えてくれます。