「ブラジルのトランプ」ボウソナロとはどんな人物なのか?

ブラジル歴史

9月1日、高等選挙裁判所(TSE)の審議により、ルーラ元大統領の2018年大統領選挙出馬の道が絶たれることが確定しました。8月に実施された統計調査により、ルーラが居ない場合に、得票率が最も多いと予想されていたのが、「ブラジルのトランプ」こと、ジャイル・ボウソナロです。

14/10/2014 Grande Expediente – Dep. Jair Bolsonaro (PP-RJ)

Wikipediaより

調査によると、ルーラ無しの場合の得票率見込みは、ボウソナロが20%、マリーナ・シウバが12%、シロ・ゴメスが9%でした。

ついでながら、ルーラが出馬した場合には、ルーラが37%、ボウソナロが18%と予想されていました。

ブラジル次期大統領になる可能性を秘めたボウソナロですが、一体どんな人物なのか、簡単にご紹介します。

概要

ジャイル・ボウソナロ(Jair Bolsonaro)は、1955年サンパウロ州生まれの63歳(2018年現在)で、ブラジル陸軍予備大尉を兼務するブラジルの政治家です。進歩党(PP)所属の下院議員で、2018年10月に行われるブラジル大統領選挙の最有力候補とされています。

2014年の選挙では、リオデジャネイロ州で最も得票率の高かった議員で、ブラジルの政治家の中でもSNSでの影響力の高さはトップクラスです。

出生と軍人生活

イタリア系移民の両親の息子として、サンパウロ州のカンピーナスに生まれ、同市の陸軍予備学校で学びました。22歳の時にリオデジャネイロ州のアグーリャス・ネグラス陸軍大学校を卒業、28歳の時に陸軍大尉の階級を得ています。

ボウソナロが31歳の時、軍人の所得が低いことについて不満を持つグループのリーダーとなり、雑誌VEJAに「所得が低い(O salário está baixo)」と題する主張を投稿し、物議を醸しました。この行為が陸軍倫理規則に違反したため、15日間の禁固刑を受けています。

雑誌VEJAは、上記の記事を掲載した翌年、軍人の給与改善に情熱を燃やしていたボウソナロを首謀者とする「袋小路作戦(Operação beco sem saída)」について記事を出しました。この作戦は、ボウソナロの母校でもあるアグーリャス・ネグラス軍事学校の宿舎など複数の箇所で爆弾を爆発させるという強迫により、軍人の給与昇給を迫るという過激なものでした。

当該記事を見た陸軍省は、ボウソナロを呼び出し、説明を要求しました。これに対して、ボウソナロは、自身の関与を断固として否定しますが、後日、彼が計画の青写真を描いていたことが分かる証拠が出てきたため、陸軍大臣は、ボウソナロを軍隊から除隊すべしとの結論に達します。

しかしながら、記事が出た約1年後に開かれた軍事最高裁の判決では、証拠不十分であるとして、ボウソナロの除隊処分は撤回されました。この時、ボウソナロは予備大尉となり、同年中に政治家への道を歩みはじめました。

政治家としてのキャリア

ボウソナロが35歳の時に連邦議員に当選し、政治家としてのキャリアが始まりました。

38歳の時に、「例外状態(regime de exceção)」の復活と国会の一時的閉鎖を求めて、物議を醸しました。「例外状態」というのは、国会や裁判所などで累積した案件の解決を促進するため、例外的な方法で物事を進める体制です。

ボウソナロは「問題解決を妨げる法律が多すぎる。例外状態では、上官がペンを取り、足枷となっている法律を取り消す線を引けばよい。国会を信用しているものは誰もいない。国会は一時的に閉鎖されるべきだ」と語りました。彼の提言は物議を醸し、彼を罰するべきだとの声も出ました。

2014年の選挙では、ボウソナロは46万票を獲得し、リオデジャネイロ州で最も得票率の多い議員となりました。このようにボウソナロは、国民からは一定の人気がありますが、議員仲間からの支持基盤は弱いです。

その証拠として、2017年に、下院議長に3度目の立候補をしますが、この時はたった4票しか得られませんでした。

過激な発言

ボウソナロは、かつての軍事政権の20年間が、「規律と進歩(ordem e progresso)」のあった時代であったとし、軍事政権時代を懐古する立場を明確にしています。

2014年に、ボウソナロは議会で彼を批判した女性議員に対して「ブスすぎてレイプするに値しない」と発言し問題になっています。また、妊娠する女性は産休を取るので生産性を落とす、という趣旨の発言をし、女性蔑視傾向が問題視されています。

2011年にプレイボーイ誌へのインタビューで「息子がホモだったら、愛せない」と語り「息子がヒゲもじゃとデートしているのを見るくらいなら、事故で死んでくれた方がマシ」と語り、ホモセクシャルへの敵意をむき出しにしています。さらに、ドラッグのやり過ぎがゲイにつながる、といった根拠のない発言で批判を浴びています。

結局、なぜボウソナロが人気なのか

こうしてみると、ボウソナロは軍国主義者で、多様性を否定する者であり、リーダーとしてふさわしい品格が感じられません。しかし、なぜルーラに次ぐ人気があるのでしょうか。

一つの要因としては、ボウソナロはSNSを通した発言の影響力が多く、特に若者の中に、彼に感化される者が多い点があります。

また、ボウソナロには彼のこれまでの言動から「秩序の破壊者」というイメージができており、伝統的な政治に食傷気味になっている人の票を集めていることが考えられます。

さらに、ボウソナロは差別発言でよく炎上するという問題はありますが、少なくとも、カネにまつわる汚職政治家のイメージが無い、という点もプラスに働いています。

ついでながら、ボウソナロの支持者は男性が多く、女性蔑視の発言が多いことから、女性の支持者はルーラや他の候補者に流れています。

また、学歴と所得が高い国民の方が、ルーラよりもボウソナロを支持する傾向があります。

Globoのこちらのページでは、2018年8月に実施された調査の結果がグラフで分かります。男女別・年齢別・地域別の様子が明確に分かれており、面白いです。

ルーラが大統領選に出馬できないことが確定し、ボウソナロの大統領当選の可能性が高くなってしまいました。いずれにしても明るい未来はあまり期待できそうにありません。



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