レシフェの象徴とも言える美しいボアビアージェン海岸を舞台にした『アクエリアス(Aquarius)』という映画をNetflixで観ました。
「どこかで見たことのあるタイトルだな」と思ったら、ジウマの弾劾裁判の時に、出演者達がジウマを擁護する表明をしたことで話題になっていたことを思い出しました。
カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールは、直近では『パラサイト 半地下の家族』や『万引き家族』などが受賞したことでも話題になりましたね。
『アクエリアス』は、この2016年のパルムドールにノミネートされた作品です(残念ながら受賞はならず)。
この記事では、映画『アクエリアス』の見どころとトリビアをご紹介します。
清涼飲料水とは関係ないです(笑)
「アクエリアス」と聞くと、反射的に青いラベルの清涼飲料水を脳裏に思い浮かべるかと思います。のどが渇いている人なら、アクエリアスを想像して「ごくっ」と音を鳴らしてしまったかもしれません。
ただし、この映画と清涼飲料水は全く関係ありません。
「アクアリウス(Aquarius)」はラテン語由来の言葉で「みずがめ座」という意味です。
映画のタイトルは、映画の主人公が住む「アクエリアス(Edifício Aquarius)」という名前のアパートに由来しています。
ついでながら、この建物は現在でも「オセアニア(Edifício Oceania)」という名前でボアビアージェン海岸の前に建っており、映画ファンの撮影スポットになっているようです。Google street viewでも確認できますので、現地に行けない方はご覧になってみてください。
あらすじ
主人公のクラーラ(65歳)は、レシフェのボアビアージェン海岸の前に建つ、アパート、アクエリアスの最後の住人です。
クラーラは、夫と子供たちと長年暮らして思い出が詰まったアパートで一生を終えるつもりでしたが、夫に先立たれ、子供たちは成人して家を巣立っていきました。
レシフェの有力建設会社が、ボアビアージェン海岸の前という一等地に建つこの古いアパートを取り壊し、近代的な高層マンションを建設するプロジェクトを始めます。
同建設会社は、アパートの住人からの部屋の買い取りを進め、主人公のクラーラの部屋が最後の部屋となりました。しかしながら、思い出の詰まったアパートで最後まで過ごすつもりのクラーラは、首を縦に振りません。
映画では、クラーラが立ち退くために建設会社があの手この手の嫌がらせをする様子が描かれており、その合間に挿入されるレシフェ市民の日常生活を描写することがテーマとなっています。
舞台となった「オセアニア」にも似たような歴史が?
冒頭で、映画の舞台となった建物「オセアニア(edifício Oceania)」の話を紹介しましたが、実際の建物も映画と似たような歴史を持っています。
3階建ての建物は、3ブロックに分かれており、1つの階に2つの家族が住める構造(dois por andar)になっています。
この建物も古き良き集合住宅として、1952年に建設されたものでしたが、老朽化が進み、時代遅れとなった建物は、2003年に取り壊される予定でした。
ある建設会社が、アパートを取り壊して、33建てのマンションを建設する計画を立てたのです。
しかし、映画のクラーラと同様に住民の反対にあった為、取り壊しは撤回されました。映画化されて話題になった効果もあり、当面は取り壊しをされることもないようです。
映画のみどころ
映画の見どころは、建設会社と主人公の女性とのバトルであり、最後は衝撃的なオチで終わります。
そのオチが、なんともブラジルらしくて面白かったです。「えっそんなオチあり?」という感じです。筆者もブラジル在住時には、予想外のオチがついて驚いた経験が何度もありますが、この映画も最後はきっちり落としてくれます。
バトルの合間にも、レシフェ市民の生活を垣間見ることが出来て面白かったです。
筆者は2年半前にブラジルから日本に帰国したので、懐かしいレシフェの街並みが見られただけで★5つつけたいところです。
他にも、部屋の置き物(オーメン・ダ・メイア・ノイチや、アナ・ダス・カハンカス等)、キッチンにある日用品のブランド名、ブラジルでよく見かけたバインダーや紙の保存BOXなども懐かしかったです。
ついでながら、非常に個人的な話になりますが、Edifício Oceaniaから徒歩1分の場所にある安宿「Pousada da Praia」には何度もお世話になりました。
「2時間25分」という映画の長さはもう少し短くしても良かったのではないかと思いますが、レシフェに行く人や、行ったことがある人は楽しめると思います。是非ご覧になってみてください。