ペレ、ジーコ、カカというブラジル人のスター選手の名前は日本でも有名ですが、彼らの名前は全て「あだ名」だということをご存知でしょうか?
日本やヨーロッパ、南米諸国(ブラジル以外)では、ユニフォームに姓を表記するのが一般的ですが、ことブラジルに限っては「あだ名」を記載する傾向が見られ、それがブラジルの文化の一種となっています。
ブラジル代表から「あだ名」選手が消えた
ところが、2018年ロシアW杯では23名の代表選手には、あだ名の選手が一人もいないという結果になりました(PauloをPaulinhoと表記するケースは除外)。これは、1974年以来で44年ぶりの出来事だったようです。
サッカー選手が「あだ名」を使用しなくなった理由は簡単で、ブラジルのサッカー・クラブの役員がそれを禁じているから、という要因があります。
あだ名禁止令は、サッカー選手があだ名に付随するイメージに縛られて、十分な才能を発揮できなくなるから、という点が理由のひとつに挙げられています。また、選手の個性を重視したサッカーから、よりチーム・プレーや戦略性を重んじるサッカーに変化していることも、その背景にはあるようです。
しかし、あだ名とサッカー選手の才能発揮はあまり関係が無いように思いますし、あだ名選手がいなくなるというのは、ブラジルらしさが失われるようで寂しくもあります。
有名な「あだ名」選手の名前と由来
折角なので、有名な「あだ名」選手の名前と由来をいくつかご紹介します。
ペレ(Pelé)
本名:Edson Arantes do Nascimento
ペレは4歳の時にサンパウロ州のバウルーに移住。当時、友達からは「エジソン」、家族からは「ジーコ(Dico)」と呼ばれていました。父親がサッカー選手だったため、ペレも自然とサッカーを愛するようになり、地元の少年とサッカーをするようになりました。
意外なことに少年時代のペレはゴールキーパーをしていた時期があり、シュートを止めると必ず「ビレ!!(Bilé)」と叫んでいました。ビレというのは、ペレのお気に入りのゴールキーパーの名前。チームメイト達は、ペレがシュートを止めるたびに「ビレ」と叫ぶ理由が分からなかったそうですが、そのうちに、チームメイト達は彼のことを「ペレ」と呼ぶようになりました。当初、ペレ本人はそのあだ名が好きでは無かったようです。
「私の名前はエジソンだ。エジソンは、電灯を発明したトーマス・エジソンのようで好きだ。ペレというのは私が考えた名前ではないし、この子供っぽい名前は好かない」とペレは後に語っています。
ペレの想いとは裏腹に、短くて覚えやすい名前と、華々しい活躍に伴い、「ペレ」という名前は瞬く間に有名になり、世界中の人に知られるようになりました。

ジーコ(Zico)
本名:Arthur Antunes Coimbra
鹿島TD就任のジーコから熱いメッセージ。「第ニの故郷へ帰る理由」 https://t.co/1bTpU3ELQ0 pic.twitter.com/zNR1B2idGO
— webSportiva (@webSportiva) 2018年8月3日
元日本代表監督で、2018年からは鹿島アントラーズのテクニカル・ディレクターを務めることになったジーコ。
ジーコは、ポルトガル移民を両親に持ち、6番目の末っ子として1953年にリオデジャネイロに生まれました。ジーコの母親は6人の子供をあだ名で呼んでいました。あだ名は順番に、マリア・ジョゼー(ゼゼー)、ジョゼ・アントゥーネス(ゼッカ)、フェルナンド(ナンド)、エドゥアルド(エドゥ)、アントニオ(トゥーニコ)でした。
アートゥル(ジーコの本名)がまだ幼い時、アートゥルは、体が小さかったことからアートゥルジーニョと呼ばれました。次第にあだ名がアートゥルジーコに変化し、いとこのエルメリンダが、あだ名を更に短くし、「ジーコ」と呼ぶようになりました。

ガリンシャ(Garrincha)
本名:Manoel dos Santos
Pelé publica foto com o ‘irmão’ Garrincha: ‘Nunca joguei ao lado de alguém melhor’. https://t.co/zGafExIpg1 pic.twitter.com/cxxStF2gqK
— Jornal Extra (@jornalextra) 2018年8月2日
ペレと並び称される存在でもあったガリンシャの名前は、carriça(日本名:ミソサザイ)という小鳥に由来しています。ガリンシャというあだ名の由来には、ガリンシャが幼い頃にミソサザイを捕るのが好きだったという説や、彼の姉が、「ガリンシャのように身体が小さい」と言ったという説などがあります。
カカ(Kaká)
本名:Ricardo Izecson Dos Santos Leite
wikipediaより
カカの弟(ホドリゴ)は、幼い頃にカカの本名(ヒカルド)の発音が難しいことから、兄のことをカカ(caca)と呼んでいました。その後、綴りはKakáに代わり、現在に至ります。ついでながら、カカの弟のホドリゴもプロ・サッカー選手として活躍しました(セレソン経験は無し)。彼も、本名ではなく、あだ名(Digão)を選手名にしています。身長が194cmと高いことから、このようなあだ名がついたのだと思います。
フッキ(Hulk)
本名:Givanildo Vieira de Sousa
wikipediaより
Jリーグでもプレーしていたフッキ。中国サッカー・チームに移籍し、ネイマールとほぼ同じ報酬を獲得したことで、ニュースにもなりました。
Hulk(ポルトガル語では「フッキ」と発音)という名前は、米マーベル・コミックの『インクレディブル・ハルク』の怪人、ハルクに似ているというのがその由来です。
ビゴージ(Bigode)
本名:João Ferreira
ビゴージ(Bigode)とはポルトガル語で「口ひげ」という意味です。1950年のW杯にはブラジル代表選手として出場しています。なぜ「口ひげ」という妙なあだ名で呼ばれているのか、調べても良く分からなかったのですが、おそらく立派な口ひげを蓄えていたから、という程度の理由かと思います。
ブランコ(branco)
本名:Cláudio Ibraim Vaz Leal
ブランコ(branco)というのはポルトガル語で「白」という意味です。あだ名の由来は調べても良くわからなかったのですが、リオ・グランデ・ド・スル出身のガウーショで白人系なのでブランコと名付けられたのではないかと思います。
カレッカ(careca)
本名:Antônio de Oliveira Filho
wikipediaより
カレッカ(careca)というのは「禿げ頭」という意味ですが、カレッカの写真をみると髪の毛はフサフサです。「カレッカ」というあだ名の由来は、彼が子供の頃、ピエロのカレキーニャの歌を良く歌っていたから、ということです。ちなみに、カレキーニャ(本名:George Savalla Gomes)は禿げ頭です。