鳥のおばちゃんの生態観察記Ⅰ

ブラジルの中流以上の家庭ではお手伝いさんを雇うのが一般的です。お手伝いさんは、日雇い(Diarista)のほか、月雇い(Mensalista)があります。うちは、他人が家に居るのがあまり好きではないのと、家事も良い運動になると考えているので雇っていないですが、日本人の関根さん(仮名)のところでは週に一回お手伝いさんを雇っています。一日の賃金は交通費込みで60レアル(約1,800円)だそうです。

愛称:鳥のおばちゃん

関根さんが雇っているお手伝いのおばちゃんは、我々の中でいつの頃からか「鳥のおばちゃん」という愛称で呼ばれるようになりました。鳥のおばちゃんは50歳、身長は150cmくらいで、肌はチョコレート色です。髪はチリチリで、白髪の多い髪を引っ詰めています。小玉スイカくらいの巨乳で、いつも黒っぽいTシャツとデニムスカートを履いています。

どうして「鳥のおばちゃん」という愛称がついたかと言うと、見た目がなんだか鳥っぽいところがあるのもその理由ですが、彼女の行動パターンにも理由があります。おばちゃんが掃除していると、途中で疲れてしまい、ソファの上にちょこんと座って、勝手に休憩してしまうのです。その姿が、止まり木に居る鳥のように見えることから、この愛称が付きました。まあ、もちろん本人を呼ぶときは名前で呼びますけどね。関根さんが目を離すと、ソファの上で休憩してしまうので、いちいち指示を出す必要があるのです。
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鳥のおばちゃんの生態

鳥のおばちゃんは、目がギョロリとしていて、愛想笑いというものを一切しないので、初めて会ったときは気難しい人なのかと思いました。しかも、口を開くと何を言っているのかさっぱり理解できないのです。ブラジルで、マトゥートとかカイピーラと呼ばれる典型的な田舎の人で、訛りがきつくてブラジル人ですら理解に苦しむこともあるそうです。

鳥のおばちゃんの味覚

一度、鳥のおばちゃんが作ったフェイジョン豆を食べたのですが、塩っ辛すぎて完食できませんでした。塩っ辛いもの、超甘いものが好きなのも田舎の人の特徴で、ちょっと極端な味覚を持っています。食についても超保守的なのですが、カレーについては大層お気に入りだというのは以前の記事でご紹介しました。
http://tabatashingo.com/top/curry1/

鳥のおばちゃんにカレーをご馳走すると、いかにもまずそうな表情で無口で食べます。日本人だったら、ご馳走を出されたあ「わあ、おいしい」とかなんとか言いそうですが、愛想を言う習慣の無いおばちゃんは、食べた後に「フンッ」と鼻で笑うしぐさをします。

初めてそのしぐさを見たときは、「うわっ、まずそうに食べてる上に、鼻で笑うなんて。そうとう口に合わなかったのかな?」と思ったのですが、何度か観察している内に、それが「喜びの表現」であるということが分かってきました。鼻で笑った時に、一瞬だけ笑顔になるというのと、なんだかよく理解できないながらも、おばちゃんのコメントから「おいしい」と言っているのが聞き取れたからです。

突然話し始める鳥のおばちゃん

妻と関根さん、そして鳥のおばちゃんと四人で食事に行った時のことです。日本人三人にお手伝いさん一人という構成だと会話の言語は自然とポルトガル語ではなく日本語になります。三人で日本語で会話していると、おばちゃんが突然ポルトガル語で全然関係のないことを話し始めました。まるで、今話して置かなければならない重要な話題のように切り出してくるのですが、それでいて、分かりにくい彼女のポルトガル語を聞くと、「お前は兄弟が何人いるんだ?」という類の全く脈絡のない、緊急性に乏しい話題だったりするのです。「うちは五人兄弟だよ。」というと、鳥のおばちゃんは満足して、例のように鼻で「フンッ」と笑い、しばらくの間黙ってまずそうに食事を続けます。
(つづく)