ブラジル北東部で唯一ビーチが無い州都の面白い歴史

ぼくはブラジルのペルナンブーコ州にあるペトロリーナと言う町に住んでいます。この町は南緯9度と赤道の近くにあり、夏の暑さは耐えがたいものがあります。太陽の日差しの強さも日本のそれとは比べようもないほどに強く、肌を焼くような太陽光線を浴びると、自然の厳しさを肌で感じることができます。

地獄のように暑い州

そんなペトロリーナから、ピアウイ州の州都であるテレジーナ(Teresina)という町に引越しした友人が居ます。彼女は、ペトロリーナを去る時に涙ながらにこう言い残していきました。「ピアウイ州はブラジルで最も暑い州なの。あそこは、ペトロリーナよりも暑くて、まさに地獄(inferno)だわ!」

調べて見たところ、新聞のグローボ誌の調査によると、ピアウイ州は2位のリオ・グランデ・ド・ノルチを大きく引き離して最も暑い州のランキングの1位に輝いていました。ピアウイ州の内陸部にある、Bom Jesus(良いイエス)という町がブラジルで最も暑い市の栄誉を勝ち取っていました。

州都なのにビーチがない

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マセイオ、サルバドール、フォルタレーザ、サン・ルイス、ジョン・ペッソーア、レシフェ、ナタウ、アラカジュ、そしてテレジーナ、これらは全てブラジル北東部にある州の州都ですが、唯一ピアウイ州の州都テレジーナだけは内陸部にあるのです。ピアウイ州は海に面しているにもかかわらず、なぜ、他の北東部の州のように海沿いに州都を建設しなかったのでしょうか?

沿岸部に州都があるのはサトウキビ生産のためだった

ポルトガル人がブラジルを「発見」して植民地とした後、ブラジル北東部はサトウキビの生産により経済発展しました。サトウキビは主に海の近くで栽培され、それがヨーロッパに輸出されていきました。

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ブラジルを語る上で外すことのできない存在、サトウキビ
ブラジル発展の大きな要素となった砂糖産業。主要な生産地はバイーア州、ペルナンブーコ州でした。今でもブラジルのサトウキビの生産量は世界一で、二位のインドの二倍以上の生産量を誇ります。 先日、ペトロリーナの農家を訪問した際に、サトウキビをご馳走にな...

牧畜業で発展したピアウイ州

ピアウイ州のあった地域ではサンパウロからやってきたバンデイランチ(ブラジル奥地探検隊)によって、牧畜業での経済発展が図られました。ブラジルの有名なフォルクローレの踊りであるブンバ・メウ・ボイ(※死んだ後に蘇える牛の伝説をベースにした祭り)も、このピアウイ州で誕生しており、この地で牧畜業が重要視されていたことが分かります。(ただし、現在ではブンバ・メウ・ボイといえば、お隣のマラニョン州の方が有名になってしまいました。)

ピアウイ州の牧畜業は輸出を目的としておらず、主に沿岸部の砂糖製造従事者が消費するための干し肉、牛革などを生産することが目的でした。そのため、ピアウイ州に限っては沿岸部ではなく、内陸部が発展したのです。

ピアウイ州にとって不幸なことは、1701年にポルトガル国王が沿岸部から60キロ以内のエリアでは牧畜業を営んではならないとの法律を出したことでした。ポルトガルは、牛がサトウキビ畑に入ることで、生産量が減ることを恐れたのです。

1852年にテレジーナ市がオエイラス市(Oeiras)から、州都を引き継いでいます。1880年まで、ピアウイ州にはビーチがありませんでしたが、隣にあるセアラー州と2つの市を交換し、66キロのビーチを獲得しました。

ちなみに、ユネスコの世界遺産にも登録されている、セラ・ダ・カピバラ国立公園はピアウイ州にあります。ピアウイ州にあるのですが、州都のテレジーナから行くよりもペルナンブーコ州のペトロリーナから車で4時間ほどかけて行くのが最も近いという相当辺鄙な世界遺産です。
http://tabatashingo.com/top/aeroporto-serra-da-capivara/

哀愁漂うピアウイ州

ブラジル北東部では厳しい生活環境の中、爪に火をともすようにして生きる人々の人生を垣間見ることがしばしばありますが、ピアウイ州はとりわけ哀愁漂う州では無いかと思ってしまいます。

  • ブラジルで最も暑く暮らしにくい州である。
  • 「ブンバ・メウ・ボイ」の発祥地でありながら、他の州に知名度で負けている。
  • 沿岸部の面積が小さい。
  • ユネスコの世界遺産を有するも訪れる人が非常に少ない。

なお、2013年に行われた調査によると、ピアウイ州は貧困層(月収255レアル=8,000円以下)の人の割合が58.1%を占めており、マラニャン州、アラゴアス州に続きブラジルで三番目に貧しい人の多い州だそうです。(ちなみに、サンパウロ州は16.1%、リオデジャネイロ州は22.2%でした。)地域によって、生活費はかなり異なるので、一概には比較できないですが、それでもおよそ60%もの人々が8,000円以下の所得で生活しているとすれば、生活の難しさは想像できるのではないでしょうか。