シルベスターは、スタローンではなく大晦日と箱根駅伝

クリスマスも終わり、今年も後一週間で終わるという時にオランダ人からのメールで、最後に「Wishing you a very good Silvester!」と書いてありました。「シルベスター」といえば、自動的に「スタローン」という単語が脳裏をよぎります。

シルベスター・スタローンのファンクラブ会員同士のやりとりならまだしも、取引先のオランダ人が「良いシルベスター・スタローンをお過ごしください!」というメッセージを文末に書くわけもないので、彼が何を言いたかったのか調べて見ました。

由来はポルトガルの言い伝え

文脈と時期から考えて、「シルベスター」というのは年越しと関係する言葉であることは想像がつきます。調べて見ると、思った通り12月31日の大晦日を表す単語であることが分かりました。その由来は、ポルトガルの言い伝えにありました。

アトランティス伝説

遥か昔、アトランティスと呼ばれる地上の楽園が存在したという伝説が、プラトンの対話編『ティマイオス』『クリティアス』で述べられています。ジブラルタル海峡の西にあったと言われるアトランティス島は、大地震とそれに伴う洪水により一昼夜で海に没したと言われています。

アトランディスの王は、神をも恐れない傲慢な王であり、その傲慢さゆえに神の怒りに触れ、アトランティスを島ごと海の藻屑にされてしまったのです。

悲しみの聖母マリア

ここからが、ポルトガルの言い伝えです。アトランティス伝説から何百年も後のこと、大晦日の日に聖母マリアが大西洋を見つめて悲しみに暮れていました。その様子を見かねて、聖シルベスター(São Silvestre)が声を掛けました。

聖シルベスターに問われて、聖母マリアが語ったところによると、彼女はアトランティス島の人々の罪深い行為によって、島が海に沈められたことを思い出し、悲しんでいたということでした。アトランティス島は海に沈められたが、人々が罪を悔い改めていないことを悲しみ、聖母マリアは涙を流しました。

聖母マリアの涙は真珠に変わり、アトランティス島のあった場所に落ちました。その一つは、ポルトガルの西に浮かぶ「マデイラ諸島」になりました。マデイラ諸島が「大西洋の真珠」という別名で呼ばれるのはこの言い伝えに由来しています。

聖母マリアの涙が真珠に変わるとともに、天に神々しい光が輝きました。現在、ヨーロッパなどでは大晦日の日付が変わる時に花火が打ち上げられますが、これは、この時の天の輝きを表現したものだそうです。

マデイラ諸島

ブラジルの年越し

ヨーロッパ文化が色濃く残るブラジルでも、年の終わりの日付が変わる頃には、各地で花火が打ち上げられます。ブラジルでは新しい年を迎えた夜に各地で花火が挙げられます。リオデジャネイロのコパカバーナ海岸で打ち上げられる花火は中でも特に有名です。2017年は不景気のためにスポンサーが不足しており、規模を縮小するそうです。

リオデジャネイロ市のゾナスウ(南部)にあるコパカバーナ海岸で行われるヘヴェイリョン(カウントダウンイベント)は 国内最大のヘヴェイリョンとして知られており...

聖シルベスターとは誰なのか?

聖シルベスターとは、第33代ローマ教皇のシルウェステル一世のことです。ローマに生まれたシルウェステル一世は、314年から335年までローマ教皇を務めています。

シルウェステル一世がローマ教皇を務めた時代は、ローマ皇帝コンスタンティヌス一世が、それまで迫害されていたキリスト教を公認した重要な時代で、ローマ教皇には大きな期待と責任が問われる時代でした。シルウェステル一世のミッションは、迫害されていたキリスト教の安定化でした。

シルウェステル一世は、335年12月31日に亡くなり、カトリック教会より「聖シルベスター」として聖人に加えられました。大晦日が「シルベスターの日」と呼ばれるのは、聖シルベスターの命日であることに由来しているのです。

ブラジルの紅白&箱根駅伝?聖シルベスター国際マラソン

ブラジルでは毎年12月31日に国際マラソン大会が行われます。その名も、聖シルベスター国際マラソン(Corrida Internacional de São Silvestre)です。2016年で92回を迎える国際マラソンは、サンパウロのパウリスタ大通りで開催されています。

イベントの発案者はジャーナリストのカスペル・リーベロ氏(Casper Líbero)です。1924年にパリで行われた夜間マラソンに着想を得て、ブラジルに夜間マラソンのアイデアを持ち込みました。第1回は1924年の12月31日の夜(23時30分)に開催されました。当初の走行距離は8.8kmで、参加者は町の市民限定でした。

何年かすると、ブラジル人なら誰でも参加できるようになり、走行距離も15kmに延長されました。1945年になると、南米大陸の外国人も受け入れるようになり、その2年後には世界中の外国人の参加を受け付けるようになりました。1975年からは女性ランナーも参加できるようになりました。現在は、開始時間は大晦日の23時30分ではなく、朝9時に変更されています(男性ランナー)。

ちなみに、外国人選手も参加できるようになってからは、優勝の座はケニア人選手に奪われることが多くなりました。

1991年から2015年までの男性・女性の国別優勝者数

ブラジルでは、年末の風物詩として、日本における紅白歌合戦又は箱根駅伝のような存在として今でも愛されています。シルベスターといえば、スタローン以外にも聖シルベスターもいるということを覚えておきたいとおもいます。