ブラジルとアメリカの黒人差別は違う?

ジャッキー・チェンの映画『ラッシュ・アワー』で、ジャッキーの相棒を演じる黒人俳優のクリス・タッカーが、黒人の客が集まるバーに行った時に、「ヘイ・マイ・ニガー!」と店主に挨拶するシーンがあります。その後、ジャッキーがクリス・タッカーを真似て「ヘイ・マイ・ニガー!」と言うと、店主が怒りだして乱闘が始まるというシーンが続きます。

また、新庄剛志がメジャー・リーグでプレーしていた時代に、ロッカールームでコーヒーを飲んでいた時、「ニガッ」と言ったら同僚の黒人選手がキレたという話を読んだことがあります。

ラッシュ・アワーや新庄選手を引き合いに出すまでもなく、アメリカにおいて「Nワード」は絶対に口にしてはならないというのは割と知られた話だと思います。

ブラジルでは逆

アメリカ合衆国においては、ネグロというのが蔑視表現になるので、黒人を指す表現としてはブラック又はアフロ・アメリカンを使うのが一般的であると学びました。一方で、ブラジルにおいては、逆にネグロ(negro)という表現が一般的で、ブラック(preto)と呼ぶのは良くないということを教えられました。

本来の意味を辞書で調べて見ると、ネグロは「二グロイド」、すなわち身体的特徴による人種の三大区分のひとつで、他にはコーカソイド(白人系)とモンゴロイド(アジア系)があります。一方で、ブラックというのは、二グロイドの特徴のうち、肌の色だけに着目した表現ということができます。

なぜ、ブラジルでは認識がアメリカと逆なのか理由は分かりませんが、ブラジルにおいては、黒人を差す時にプレットではなくネグロと表現したほうが良さそうです。

ブラジルと北米における差別の違い

かつて北米において、黒人はバスに乗るときに白人の隣に座ってはならない、同じトイレを使ってはならないといった人種差別が行われていた時代がありました。北米においては、黒人であること自体が差別の理由となっていました。

一方のブラジルにおいては、黒人であること自体は差別の対象とならないものの、社会的偏見が存在しています。例えば、ある犯罪の現場において、逃走した容疑者が黒人と白人であった場合、警官は黒人の方を優先して捕まえようとする可能性が高いそうです。というのも、ブラジルにおいては、「黒人は余り勉強しないし、貧しく、犯罪に走りやすいのだ。」と考える人がいるからです。しかし、もし、捕まえた黒人が大学教授や裁判官だと分かったなら、警官の扱いも異なることでしょう。つまり、ブラジルにおいては「人種差別」は存在しないものの、「人種による偏見」が存在するということです。

筆者は18歳の時に、英語の勉強のためロサンゼルスに1ヶ月弱滞在したことがあります。その時にお世話になったホストファミリーは、黒人の家族で、彼の家の近所には同じ肌の色をした人々が集まって暮らしていました。隣の家では、ドーベルマンが飼われていて、バスケットコートでバスケをする黒人の若者がおり、どこからともなくヒップホップが流れてくるという雰囲気の場所で、カルチャーショックを覚えました。ホストファミリーの家では、玄関を開けるのに鍵が三種類くらい必要で、かつ、玄関が二重になっていました。外側の扉は鉄格子のようになっており、容易に訪問者が中に入れないようになっていました。

一方のブラジルでは、筆者の知る限りにおいては、北米のように黒人だけが集まる店、黒人だけが集まる集落というのは存在しないように思います。その理由は、混血が進んで黒人という区分がもつ意味が薄れていることが一つの要因であると考えます。肌の色が白くとも、目や鼻、髪の毛に黒人の特徴を残すブラジル人も多くいます。自分が白人だと思っていても、ご先祖様を遡ってみると、黒人やインディオの血が流れているという可能性が否定できないのです。従って、黒人を差別することは自分自身のアイデンティティを否定することにもなりかねません。

ブラジルにおいて混血が多いのは何故か?

ブラジルで他の国よりも混血が多いのは、ブラジルを植民地にしたポルトガル人が、数世紀の間、アラブ人と共生していたことと関連が深いとする考え方があります。すなわち、ポルトガル人はアングロサクソン系とは異なり、アラブ人との共生を通じて文化が違う民族と共生するためのノウハウを持っていたことが原因ではないかというのです。また、ブラジルにやってきたポルトガル人の多くが男性であったことが黒人とインディオとの混血がすすんだ原因であるとの指摘もあります。

社会的差別をなくすために

リオ五輪でブラジル初の金メダルを獲得したラファエラ・シルバは、映画でも有名なファベーラ「シダージ・ジ・デウス」出身の柔道家であり、人種差別を乗り越えて金メダルを獲得した彼女の功績は、多くの貧困層の子供達に「希望」をもたらしました。

 《黒人女性、貧困、リオ五輪初の金メダル、ブラジルの顔》―スペイン「エル・パイス」紙ポ語版10日付電子版はそう報じた。柔道家ラファエラ・シルヴァの金メダルは伯国のものだが、実は日本の〃勝利〃でもある。日本の日本人にも心か ...

北米における人種差別に比べると、ブラジルにおける主な差別は社会的な差別であるため、政治や経済政策によって解消していくことが可能です。ブラジルがより良い国となり、差別の無い国として世界の見本となるためには、貧困層の教育制度を充実させ、社会的な差別をなくす努力が不可欠です。

参考情報:ブラジルの人種差別はアメリカと異なる?(ポルトガル語)

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