日本語になったポルトガル語の単語

日本を初めて訪れたヨーロッパ人は1543年に種子島に漂着したポルトガル人であると言われています。その後、1540年代から一世紀に渡って南蛮貿易が行われ、ヨーロッパやアジアの産品が日本に持ち込まれました。この時に、ポルトガル商人によって持ち込まれた商品には、日本人が目にしたことの無いものも多く、ポルトガル語の単語がそのまま日本語として取り入れられることになりました。

司馬遼太郎は、『南蛮のみちII』で次のように書いています。

南蛮の痕跡は私どもの日常語のなかに、わずかにとどめている。多くは、ポルトガル語である。食べるパンはポルトガル語のpaoからの転訛だといわれる。ただしスペイン語ではそのままpanだからそのほうかとも思われるが、歴史的状況としてはポルトガル語源説が妥当である。テンプラは、ポルトガル語のtemperoから出たといわれ、遊戯のカルタの場合、ポルトガル語でもスペイン語でも、cartaである。

日本で初めてワインを飲んだ男、織田信長

日本で初めてワインを飲んだのは、織田信長であるとする説があります。フランシスコ・ザビエルがポルトガルから持ち込んだワインを信長に献上したと言われています。ポルトガル語では、赤ワインのことを「ヴィーニョ・チント(vinho tinto)」と呼ぶことから、当時は赤ワインのことを珍陀酒(ちんたしゅ)と呼んでいたそうです。

日本語になったポルトガル語一覧

以下は日本語になったポルトガル語の一覧表です。分かりにくい日本語には意味を追加しました。

日本語 意味 ポルトガル語 読み方
ランビキ 酒の蒸留器具 alambique アランビキ
ブランコ balanço バランソ
バッテラ 鯖寿司 bateira バッテイラ
ビスケット biscoito ビスコイト
ボーロ(ケーキ) ケーキ bolo ボーロ
ボタン botão ボタン
合羽 capa カッパ
甲比丹(カピタン) 首領、船長 capitão カピタン
カルメラ caramelo カラメーロ
歌留多(かるた) cartas カルタス
カステラ castella カステラ
チャルメラ 管楽器シャリュモー charamela シャラメーラ
切支丹(キリシタン) christão クリスタン
キリスト Christo クリスト
金平糖(コンペイトウ) confeito コンフェイト
コップ copo コッポ
コロッケ croquete クロケッチ
ギヤマン ダイアモンド diamante ジアマンチ
フラスコ frasco フラスコ
襦袢(じゅばん) gibão ジバン
オランダ Hollanda オランダ
チョッキ jaque ジャッキ
じょうろ jarro ジャーホ
マント manto マント
メリヤス 機械編みの布地 meias メイアス
ミイラ mirra ミーハ
おんぶ ombro オンブロ
オルガン órgão オルガン
伴天連・破天連 宣教師 padre パドリ
パン pão パン
先斗町・ぽんとちょう 京都市にある花街 ponto ポント
羅紗(ラシャ) 厚手の毛織物 raxa ラシャ
サバト ユダヤ教の安息日 sábado サーバド
シャボン sabão サボン
更紗(サラサ) 模様を染めた布地 saraça サラサ
煙草 tabaco タバコ
天麩羅(テンプラ) Têmporas テンポラス
ベランダ varanda ヴァランダ
ビロード 滑らかで光沢のある織物 veludo ヴェルード
ビードロ(ガラス) vidro ヴィードロ

天麩羅は精進料理?

上でご紹介した通り、司馬遼太郎も天麩羅は「tempero(テンペーロ)」に由来するのだと書いています。このテンペーロという単語はブラジルでも日常的に使われている単語で、「調味料」という意味があります。しかし、「調味料」という単語が天麩羅の語源だと言われてもしっくりきません。

天麩羅の語源に関しては、もっとしっくりと来る説があります。南蛮貿易時代の宣教師は、三ヵ月に1回、3日間の肉の断食を行っていました。この3日間のことを「Têmporas(テンポラス)」と呼んでいました。宣教師たちは、この期間には野菜と魚をおろしたものを揚げて食べていたといいます。キリスト教徒になった日本人も宣教師同様に野菜と魚を揚げたものをテンポラスの時期に食べていたと言います。こちらの説の方が無理が無い気がします。