ブラジリアに行く前に知っておきたいこと

過去の無い首都、ブラジリアに行ってきました。

ブラジリアは、今から56年前の1960年にクビシェッキ大統領の指導により建設されたブラジルの首都です。ブラジリアに遷都される前は、リオデジャネイロが首都で、さらにその前はサルバドールに首都がおかれていました。

この記事では、実際にブラジリアに行ってみて、事前に知っておくと役に立ちそうな情報をまとめています。

ブラジリアの都市計画

ブラジリアの都市計画は、建築家のルシオ・コスタとオスカー・ニーマイヤーにより構想され、わずか四年弱の建設期間で完成しました。ブラジルにおける建設工事は予定を大幅に遅れるのが常ですが、それを考慮すると、クビシェッキ大統領をはじめとした、建設関係者の決意と意地を感じます。ブラジリアの都市景観はユネスコの世界遺産にも登録されています。

ルシオ・コスタ

オスカー・ニーマイヤー 

ブラジリアはどんな町?


ブラジリアは、飛行機の形をイメージして都市計画がなされており、ホテルエリア、居住エリア、省庁エリアなどに整然と分けられています。飛行機の翼部分にホテルエリア、居住エリアがあり、前方に省庁があり、コックピット部分には国会議事堂、最高裁判所、外部省、大統領府などがあります。

ブラジリアは、もともと何もなかったところに、一人の人間(ルシオ・コスタ)がデザインした都市であり、タクシーで町中を走っているとまるで巨大な現代美術館に居るかのような錯覚を覚えます。

車はロータリーを利用して方向転換するので、幹線道路には、信号機がほとんど存在しません。左右には、似たような建物が等間隔で立ち並び、生活感をまるで感じない風景が続きます。ブラジリアに到着する前は、庶民のエネルギー溢れるベレンに居たのですが、ベレンと比べるとブラジリアの無機質な町並みは一層引き立ちます。

すべての首都や大都市は歳月のなかで木が育つようにして育ってきたが、さきに書いたようにこの都は、そう、あのラス・ヴェガスのように、突如として過去の表徴を一切、根にも幹にも梢にも持たないで出現したのである。育ってきたのでもなく、生えたのでもない。そこにおかれたのである。(開高健)
【電子特別版】オーパ! (集英社文庫)

ブラジリアの観光で注意すべきポイント

ブラジリアは標高が約1200mあり、軽井沢(約1000m)よりも標高が高いという点について、ブラジルに到着した翌日の肌寒い朝に、暖かい毛布にくるまって目覚めた時に実感しました。かように朝はさわやかで心地良く感じたのですが、日中の太陽は人格が変わったように強烈な日差しを放射し、ここが軽井沢ではなく、ブラジルであることを実感させてくれます。調べたところ、ブラジリアは南緯15度、サンパウロは南緯23度、軽井沢は北緯36度でした。

ブラジリアには、空間を大胆に使った建築アートが広がっており、人々に日陰を提供する街路樹や高いビルが無く、あるのは無機質に続くコンクリートの地面だけです。

コンクリートは、容赦なく太陽の光を照り返してきます。それは、まともに目を開けることが困難なほどの眩しさでした。ブラジリア観光が初めてという方は、以下のアイテムを準備しておくことをおすすめします。

  • サングラス
  • UV加工した衣類
  • 日傘

日傘を差している人は見かけませんでしたが、日焼けが気になる女性はあったほうが良いと思います。

移動手段

ホテルの受付の人からは、タクシーは割高なので、一人80レアル(約3,000円)でツアーに参加したほうが良いと言われましたが、ツアーだと自由が奪われそうだったので、結局タクシーで巡ることにしました。タクシー代は夫婦二人で、主な観光地を巡って60レアル(約2,200円)だったので、こちらのほうが安く上がりました。

ブラジリアは、エリアによっては流しのタクシーに乗るのが困難な場所があります。筆者は、昼食の後タクシーがなかなか捕まえられず、強烈な日差しの中を歩かなければならなかったので、妻の恨みを一身に受けることとなりました。

観光の際にはウーバーなどのアプリを入れておくか、タクシー会社の電話番号を持っておくことをおすすめします。

ホテルとレストラン

ブラジリアでは、ホテル区画とレストラン区画が明確に分かれています。ホテルから歩いてレストランに行くのはまず無理なので、タクシーに乗ってレストラン区画まで行くか、ホテルのレストランで食事をすることになります。

その情報を事前に入手していたので、Naoum Expressというショッピングセンターの近くにあるホテルに滞在することにしました。同ホテルは、4階建ての小さなホテルですが、設備は新しく清潔で、ショッピングセンター、ドン・ボスコ教会、テレビ塔にも歩いて行けるので便利でした。

ホテルのはす向かいにあるショッピングセンター(PATIO BRASIL)
最上階にフードコートや映画館があります。

ブラジリアの見どころ

ブラジリアに来た観光客の目的は、ルシオ・コスタの設計した博物館に点在する芸術家たちの作品を鑑賞することにあります。主要なエリアは精力的に観光できる人であれば一日あれば十分見て回れるものと思います。

ドン・ボスコ教会


ルシオ・コスタが設計した教会で、ブラジルで最も有名な教会のひとつ。ブラジリアの保護聖人とされるドン・ボスコに敬意を表してその名がつけられています。16メートルの柱が80本あり、壁には12トンもの青いステンドガラスがあしらわれ、幻想的な雰囲気を演出しています。中央部には、7,400もの部品からなるシャンデリアが設置されています。

ドン・ボスコは、1815年にイタリアで生まれた聖職者で、貧しい青少年の教育問題に積極的に取り組んだ人です。ドン・ボスコの創設したサレジオ会は、イエズス会、フランシスコ会に次ぐ大きな修道会のひとつに数えられます。

テレビ塔


1967年3月に完成した230mの塔。飛行機の翼の付け根部分に立っています。エレベーターで75mの高さにある展望台に上がることができます。展望台からはルシオ・コスタのパイロット・プランを一望することができます。

テレビ塔の正面に立つモニュメント「宇宙時代(Era Espacial)」

マネ・ガリンシャ・スタジアム

詩人のヴィニシウス・デ・モラエスが「足の曲がった天使(O Anjo de Pernas Tortas)」と称したガリンシャは1933年生まれのブラジルのサッカー選手で、ペレと同時期にプレーした得点王です。1962年にブラジルのW杯2連覇をもたらしたキーパーソン。

テレビ塔の下は芝生の公園となっており、ブラジリア市民の憩いの場ともなっています。

ブラジリア国立博物館


ブラジリア国立博物館(Museu Nacional de Brasília)は、ドーム型の建物で鳥山明のマンガに出てきそうな見た目をしています。オスカー・ニーマイヤーの作品です。内部はモダンアートが展示されており、無料で見ることができます。

ブラジリア大聖堂


ブラジリア大聖堂(Catedral Metropolitana de Brasília)は、ブラジリアの代表的な建築物で、オスカー・ニーマイヤーによる作品です。1960年に16本の支柱部分のみが建設され、10年後の1970年に現在のようにガラス部分がはめ込まれました。

聖堂内には、地下の入り口から入ります。

内部に入ると、青と緑のガラスを通して明るい太陽光で照らされています。

天井からは3体の天使像が吊るされています。これらの彫刻は最高裁判所の前に立っている「正義」像と同じ作者による作品です。

三権広場


三権広場(Praça dos Três Poderes)は、飛行機のコックピット部分にある広場で、重要な建築が集中しています。その名の通り、三権すなわち、行政権(大統領府)、司法権(最高裁判所)、立法権(国会議事堂)が一か所に集まっています。三権広場でテロでもあったら大変そうです。

最高裁判所(Supremo Tribunal Federal)


最高裁判所は、テレビのニュースに頻繁に登場します。アルフレッド・セスチアッティ(Alfredo Ceschiatti)作の目隠しをして剣をもった女性像が有名です。目隠しは公正性を象徴し、剣は司法を実行するために必要な勇気、力、規律を象徴しています。

ルシオ・コスタ博物館


地下にあるルシオ・コスタ博物館には、ブラジリアのジオラマが設置されており、都市計画を俯瞰することができます。また、ルシオ・コスタが書いたパイロット・プランのコピーや、都市ができる前の何もなかったブラジリアの写真が展示されていて興味深いです。

三権広場が建築されるまえの土地の写真

現在はバスターミナルやショッピングセンターが立っている場所。

上の写真と同じ場所の現在の様子

ルシオ・コスタによるブラジリアの都市デザイン

クビシェッキ大統領の像


ブラジリア遷都を実行に移したクビシェッキ大統領の巨大な顔の像。大統領府を睨むように設置されており、やや怖いです。

「セルトンを切り拓き、大胆さ、熱意と自信を持ってブラジリアを創設したジュセリーノ・クビシェッキ大統領に敬意を表す」と書いてあります。

ブラジリア建設労働者の像(Os Candangos)


ブルーノ・ジョルジ(Bruno Giorgi)作、ブラジリア建設労働者の像(Os Candangos)は都市建設中に生き埋めになって死亡した2人の労働者に敬意を表して作られた作品です。

タンクレード・ネーヴェス記念館(Panteão da Pátria.)


タンクレード・ネーヴェスは、1985年の選挙でブラジル大統領に選出された政治家です。彼の当選により、21年間続いた軍政が終了し、民政に移管することになりましたが、彼は大統領就任式前夜に倒れ、ブラジリアの病院で息を引き取りました。

大統領府(Palácio do Planalto)


オスカー・ニーマイヤーの建築によるもので、「高原の宮殿(Palácio do Planalto)」という名前がつけられています。

大統領府の前には、独立のドラゴン(Dragões da Independência)とよばれる儀仗兵が経っています。

国会議事堂(Congresso Nacional)


(妻撮影)
テレビの政治ニュースと一緒に画面に映されることの多い国会議事堂は向かって左側が上院、右側が下院の建物になっています。これも、オスカー・ニーマイヤーの作品です。

外務省


外務省は、当初アーチの宮殿(Palácio dos Arcos)と呼ばれていました。それは、建物のファサードがアーチ状をしていることに由来していますが、外務省はリオデジャネイロ時代からイタマラチイと呼ばれていたので、結局、イタマラチイ宮殿(Palácio Itamaraty)と呼ばれるようになりました。こちらもオスカー・ニーマイヤーの作品です。

大統領官邸(Palácio da Alvorada)

三権広場の先、パラノア湖に面した場所に立つ大統領官邸は、オスカー・ニーマイヤーの建築によるもので、「夜明けの宮殿(Palácio da Alvorada)」という名前がつけられています。

各省庁


国会議事堂の正面には太い幹線道路が2本並んでおり、その両側には等間隔で全く同じ建物が林立しています。正面には各省庁の名前が大きく書かれています。

こちらは保健省の建物

魔のウィークエンド

ブラジリアは、コンパクトで機能的な都市ではあるのですが、経済発展や文化的な成熟度ではサンパウロやリオデジャネイロには比べることもできないため、しばしば、ブラジリアがブラジルの首都であることを忘れることがあります。唯一(?)首都らしいのは、ブラジリアの立派な空港で、特に国内線のロビーは設備が充実しており、国際線のロビーかと錯覚するほどです。

ブラジリアの住人にとっては、週末をいかに過ごすかという問題もあります。

ブラジリアの住人は、政治家、官僚、その他政府系機関職員、大使館員などが主である。その人たちを悩ませていることがある。
「魔のウィークエンド」金曜日午後になると、約1000キロ離れたサンパウロとリオの自宅に帰る人で空港はごった返す。人工都市の悲しさで遊ぶ場所が少ないし、外食スポットも限られているので、ストレス発散のために脱出する人もいる。

ブラジルの流儀 なぜ「21世紀の主役」なのか (中公新書)
中央公論新社 (2014-07-11)
売り上げランキング: 156,141

http://tabatashingo.com/top/brasilia/
http://tabatashingo.com/top/origem-nome-cidade/