醍醐麻沙夫氏は、『オーパ!』の中で次のように忠告していました。
いまのうちにお願いしておきますが、同音異義という語学の問題があります。日本語ではまともでもブラジル人の耳にはえらいことになるという単語があるんですね。たとえば、酒のサカナ、ビールのサカナの、サカナがいけない。これは口にしないで下さいな。オナニーという意味になりますからね。今日以後はビールのウオ、酒のウオ。そう言ってください。早く習慣づけることですね。

ぼくはつい一年前までレシフェにあるCEDEPEというビジネススクールで経営学を勉強していたんですが、授業中に良く聞く単語があったんですね。それが、この「サカナ」という単語です。ポルトガル語の綴りはSACANAGEM(サカナージェン)です。
この「サカナージェン」という単語なんですが、先生も生徒も好んで良く使っていたんです。あまりに頻繁に出てくるので辞書で調べちゃいました。白水社の辞書によると、「ならず者的な言動、反道徳的な言動」となっていました。
実際の文脈では、次のようにして使われます。例えば汚職政治家が巧妙な手口を使って、自らの懐を肥やしたという話題が出た時に、誰からともなくこんな声があがります。「Que Sacanagem!!!(キ・サカナージェン!!)」まあ、意味としては「なんちゅうこったい」あたりに似ているのではないかと思います。
冒頭の醍醐麻沙夫氏の説明によると、サカナにはオナニーという意味があるようです。白水社の辞書によると、サカナージェンの動詞形である「SACANEAR(サカネアー)」という単語の意味として、「他人に手淫を行う」となっておりました。33年間生きてきましたが、手淫などという単語は聞いたこともありませんでした。
なんとなく想像はつきましたが、いちおう調べましたよ、大辞泉で。大辞泉によると、手淫は「手などで自分の性器を刺激して性的快感を得る行為。自慰。自涜(じとく)。マスターベーション。オナニー。」という説明がなされていました。自涜なんていう単語も知りませんでした。
日本に半年間住んだことのあるブラジル人が、そっとぼくに耳打ちしてくれました。「日本語ってブラジルではうかつに口にできない単語があるんだ。」へえー何それ?と興味津々で聞いてみると、その単語は「オサカナ」だよって教えてくれたんです。
ポルトガル語で、「Olhar(オリャー)」というのは「見る」という意味があります。で、それを命令形にすると、「Olha(オーリャ)」になるんですね(文法的にはOlheの方が正しいようですが。)ブラジル人というのは省略するのが好きな人種なので、オーリャではなくて「オー」とも言います。
はい、勘のいい読者の方なら「オサカナ」がナゼいけないのかもうわかったと思います。あえて答えは書かないでおきます。ヒント:「オーサカナ!」