今更ですが、開高健『オーパ!』をむさぼり読んでしまいました。

以前、日本から来た方(仮に石田さんとしておきます)と一緒にベレンに行きました。昼飯の時に河の近くまで行ったので、河辺まで歩いて行ってみました。石田さんは、とろんとおしるこみたいに黄濁した水を手ですくって、ペロリと舐めてしまいました。それで、「極上中汲み」の味であるといって、とてもハシャいでいました。

病原菌がウジャウジャいそうなケッタイな河の水を飲んで、なぜそんなにハシャいでいるのか、ぼくがまったく理解できずにいると、石田さんは解説してくれました。「若いときに、開高健の『オーパ!』を擦り切れるほどに読み込んだんでねえ。若いころにあこがれていた場所に居ると思うと嬉しくて。」

「『オーパ!』という本の名前は良く聞きますが、まだ読んだことが無いンです。」というと、石田さんが親切にも日本に帰ってから本を送ってくれました。

早速、本をパラパラめくってみてビックリしました。本の”半分以上が”色鮮やかなカラー写真で彩られているんですね。これで1,000円って大変安いですね。その写真の迫力がすごくて、思わず「オーパ!*」と言ってしまいそうになります。(*何事であれ、ブラジルでは驚ろいたり感嘆したりするとき、「オーパ!」という)

そして、驚いたことがもう一つ。開高健のブラジルへの旅は、今から38年前の1977年に敢行されたわけですが、本の中に登場する風景は今とそんなに変わっていないんです。日本の40年間とアマゾンの40年間では変化のスピードが異なるようです。

開高健の案内役として旅に参加していた醍醐麻沙夫氏の話が強烈だったので、ここに引用しておくことにします。

別れしなに醍醐君はまッ黒のソーセージのような固い棒を一本とりだし、これはガラナの実をつぶして固めたもので強精剤ですけど、ピラルクの舌でこすると粉になりますといった。そしてピラルクの舌の干したのをとりだしたが、これは白くて固くて、小さな無数の歯とも凸起ともいえるものが表面に生え、オロシ金として立派に使えるものであった。

魚の舌がオロシ金になるって、ホントかな?と思って、ウェブ検索したら、本当でした。
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ブラジルにはバクという動物がいます。例の、夢を食べるという伝説のある四足獣です。これが物持ちで有名なんですね。凄い物持ちなんです。図体が大きいからアレも大きいということではゾウやクジラでしょうけど、バクは物と図体の比率が全動物中でナンバー・ワンだということになってるんですね。その季節になると動物園でも野外でも牡の物がグイグイのびてきて一メートルにもなる。あまり大きいもんだからさきが折れまがって地面について泥まみれになってる。それをバクは後足二本でめんどうくさそうに蹴とばして歩くんですよ。シュンになるとそのさきがギラギラと赤紫色に光って、あまり艶々するもんだから、人間が顔を映してヒゲが剃れるくらいです。日本移民の一人がこれを見てキモをつぶし、牡がこんなに大きいのなら牝はどうなってるんだろうと思って森から一匹つれてきて腕をつっこんだら、ズブズブズブッと肩まで入ってしまったそうです。バクはそういう動物なんですが、ブラジル語ではアンタといいます。

艶々するのはイイですが、あえてそれでヒゲを剃らなくてもいいじゃないかと突っ込みたくなる描写です。
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ピラニアに関する恐るべき描写も読みごたえがあります。

あるときひまつぶしにスルビンでも釣るかということになり、生きたアラクーの口に鈎をかけ、大きな錘をつけて遠くへどぶンと投げ込んだ。それが虫の知らせか、何か思いつくことがあり、五分程してなにげなくリールを巻いてみると、アラクーはちゃんと鈎について戻ってきたけれど、すでにピラーニャにやられていて、頭と骨と尾しかのこっていなかった。頭から尾までの肉はきれいに剥ぎとられていた。声を呑んだのは、そのアラクーがまだピリピリと体をふるわせて生きているという事実であった。おそらく彼は肉を噛みとられつつ、何かちょっとつめたいナというぐらいにしか感じなかったのではあるまいかと想像したくなるほどの早業であった。
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写真も多いし、開高健の文体が面白いのでサンパウロ出張中の飛行機で読み終わってしまいました。これを機会に、オーパ!のアラスカ篇やモンゴル篇も読んでみようと思います。

オーパ! (集英社文庫 122-A)
開高 健
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ベレン旅行記のまとめ
「ベレン」というのは、「ベツレヘム」のポルトガル語読みで、イエス・キリストの誕生した町と同じ名前が付けられています。アマゾン河の河口に発達したこの町では、開高健のように三日も船に乗らずとも、市内に居ながらにして十分に息を呑むような光景を見ることができ...