ブラジル南部が独立してイグアス国誕生?

勤務先はブラジル北東部のペルナンブーコ州にあるのですが、税務コンサルとしてサンタ・カタリーナ州のブラジル人が定期的に会社に来てくれています。彼は、ブラジル最南端にある州、リオ・グランデ・ド・スル州生まれのガウーショです。良く行くシュハスカリアの店主に似ているので、彼を見るとシュハスコが食べたくなってしまいます。
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ブラジル南部

リオ・グランデ・ド・スル州と、パラナー州、サンタ・カタリーナ州を合わせた3つの州を地理的に「ブラジル南部(Sul do Brasil)」と呼びます。この地域は、ヨーロッパ系の白人移民の子孫が多く、経済的にも発展しており、ブラジルの中では最も秩序のある地域であるという特徴があります。
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(ウィキペディアより)

イグアス国

前述したガウーショの税務コンサルと雑談していた際に、このブラジル南部が独立して、「イグアス国(País do Iguaçú)」を作る構想があるという話を聞きました。イグアスというのは、パラナー州にある有名な滝の名前であるということは、説明する必要はありませんね。調べたところ、「イグアス国」という構想は見つからなかったのですが、ブラジル南部が独立運動をしているという話は本当でした。

ブラジル南部独立運動

ブラジル南部の3つの州であるパラナー州、サンタ・カタリーナ州、リオ・グランデ・ド・スル州がブラジルから離れて新しい国をつくるという独立運動、通称「南部は私の国(O Sul é o Meu País)」運動は、1992年にサンタ・カタリーナ州で元ラグーナ市長の政治家アディウシオ・カドリンが始めました。この独立運動について、2016年10月に行われる全国市長選挙に合わせて議論が活発になってきているという記事がありました。

ブラジリアにはもうウンザリ。南部が私の国。

10月2日に予定されている市長選において、南部独立を支持するグループは国民投票を行うことを要請しています。国民投票の内容は、「あなたは、パラナー州、サンタ・カタリーナ州、リオ・グランデ・ド・スル州が独立国を形成することを望みますか?」との質問に対して、イエスかノーで回答するというものです。

独立運動グループは、最低でも百万人の支持又は3州合わせて5%の支持を得たい考えです。主導者は、イギリスで行われたEU離脱に関する国民投票は、ブラジル南部が独立するのに追い風になると期待しています。

国民投票の招集上では次の文句が謳われます。「南部の人々は、ブラジル人で居続けたいかどうかという意見を表明する機会がこれまで一度もありませんでした。」国民投票の結果、南部の人々の意見を国際的にも公式に表明することができ、公的に独立運動を認知してもらえるようになることが期待されています。

国民投票を呼び掛けるイラスト

独立の目的と立ちはだかる壁

南部独立運動の主導者は、ブラジルからの独立により、「中央集権化した帝国主義政府」「税制のテロリズム」から自由になることを希望しています。

ブラジルの憲法には、「ブラジル連邦は、構成する各州と市の解消することのできない結束により成立している」ことが規定されていて、州が新しい国を設立することは憲法違反になります。そこで、独立運動の主導者は、「独立」という表現を避け、「自治の回復」という表現を好んで使用しています。運動の根底にあるのは、「表現の自由」そして「国際人権原則に基づく、人生を自主的に決定する権利の発現」です。

南部は私の国“O Sul é o Meu País”」のツイートによると、南部3州で2014年に納めた税金が579億レアルであるのに対して、実際に同地で使われたお金は121億レアルしかなかったようで、これを指して主導者は「税制のテロリズム」という言葉を使っています。

その他の地域の人々からは、「人種差別運動である」との批判もありますが、独立運動の主導者は、「ブラジル南部はさまざまな民族が住む多様性のある地域である」として、その批判が見当違いな指摘であると否定しています。例として、イタジャイ地方に住む黒人の存在を指摘しています。

私はブラジルレイロ(ブラジル人)ではない。私はスリスタ(南部人)だ。

ブラジル南部の規模感

ブラジル南部の3州を合わせた面積は576千km2で、フランスよりも少し大きい面積を有しています。人口は27百万人でベネズエラに匹敵。GDPは5,356億レアルでポーランドに匹敵します。(ガゼッタ・ド・ポーボ調査

批判

パラナー連邦大学の史学科教授のカルロス・アントゥネスによると、南部独立運動は、根拠薄弱であり、民族分裂の試みであり、ブラジルの国家存立の基盤を破壊しようとする精神錯乱であると、運動を批判しています。バイーア連邦大学の教授であるエルベルト・トレドも、「政治的な責任の伴った真面目な運動ではない。」として、独立の考えに疑問を呈しています。

ノルデグジット

ブラジル南部独立に関して調べていたところ、「ノルデグジット(Nordexit)」という刺激的な単語に出会いました。英国のEU離脱は海外メディアではBrexitという単語で報道されていましたが、それのブラジル北東部=ノルデスチ(Nordeste)版ということです。記事を書いているのは、BBCブラジルでした。

『ノルデスチ独立(Nordeste Independente)』の著者であるジャッキス・ヒベンボインは、ノルデスチの独立をテーマに関して20年間にわたり議論を重ねており、Brexitが実現したタイミングを好機ととらえています。過去において独立論はタブーでしたが、柔軟な考えを持つ若い世代の影響で、最近では議論を行う余地が出てきたと考えているようです。あえてEUで例えるなら、ギリシャがEU離脱を検討しているようなもので、「やめたほうがいいんじゃない?」という考えが真っ先に頭をよぎりました。