ブラジル砂糖産業のルーツ、マデイラ諸島

アフリカ北部モロッコの西500kmほどの場所に、マデイラ諸島というポルトガル領の島があります。

最も大きいのはマデイラ島で、その北東部にポルトサント島があります。この2つには人が住んでいますが、その他にもデゼルタス島(Desertas)セルヴァジェンス島(Selvagens)という無人島があります。

砂糖産業が、ブラジル植民時代の初期に及ぼした経済的な影響は計り知れないものがありますが、その技術はこのマデイラ諸島から持ち込まれたものでした。

島名の由来

マデイラ島はポルトガル人が発見した時に、マデイラ=木が沢山生えていたことから、その名前がつけられました。他の島名も翻訳すると、ポルトサント島=聖なる港デゼルタス島=放棄された島セルヴァジェンス島=未開の島となります。

自然環境

火山諸島で、島の中心にはルイボ・デ・サンターナ山(標高1861m)があります。火山活動の影響で肥沃な土地を有しています。北緯32度に位置し、日本では鹿児島県、宮崎県と同じ緯度にあります。気候は亜熱帯で、森林が生い茂る豊かな環境を有しています。

マデイラ島の北部に生い茂る月桂樹(ラウリシルバ)原生林は、1999年にユネスコの世界自然遺産に登録されており、今でも原生林が維持されています。月桂樹(ローリエ)は南ヨーロッパの原産で、料理をする人なら煮込み料理に入れる「ローリエの葉」の名前を聞いたことがあると思います。

マデイラ諸島の発見

1418年、ジョアン・ゴンサウヴェス・ザルコ(João Gonçalves Zarco)トリスタオン・ヴァス・テイシェイラ(Tristão Vaz Teixeira)という二人の青年航海士がアフリカ沿岸部を航海している時に嵐に巻き込まれ、航路を外れて何日か流された後、マデイラ諸島のポルトサント島に漂着しました。この島に漂着できたことで、ザルコ達は命拾いをしたので、島の名前をポルトサント(聖なる港)と名付けました。

その翌年、1419年には南西にあるマデイラ島を発見しました。島の発見を知ったポルトガルのエンリケ航海王子は、1425年に島の植民を開始しました。1440年からはカピタニア制を取り入れて、初代の領首には発見者のテイシェイラが就任しました。彼の家族を中心にポルトガルからマデイラ諸島への入植が進められました。

サトウキビ産業の発展

エンリケ航海王子の指揮のもと、1425年にシシリア島のサトウキビがマデイラ島に持ち込まれました。砂糖の製造技術も同時に持ち込まれています。マデイラ島での砂糖産業の発展はユダヤ商人、ジェノバ商人等の注目を浴びることになり、産業の発展に拍車がかかりました。砂糖産業は人手がかかるものなので、労働力としてアフリカやカナリア諸島などから奴隷が連れ込まれました。

この島で培われた砂糖産業のノウハウは、その後、ポルトガル人によってブラジルに持ち込まれ、ブラジル発展の基幹産業となりました。ブラジルで砂糖産業が発展すると、マデイラ諸島の砂糖産業は衰退し、新しい商機をマデイラ酒に見出すことになります。

クリスチアーノ・ロナウド空港

2017年は、このマデイラ諸島関連で面白いニュースがありました。2017年3月29日にマデイラ島の空港が名称変更し、「クリスチアーノ・ロナウド・マデイラ空港」となったのです。もちろん、世界で最も優秀なサッカー選手に選ばれたポルトガル人選手に敬意を表したものです。

話題になったのは空港の名前ではなく、記念品として空港に置かれたクリスチアーノ・ロナウドの胸像です。

ウェブ上のコメントの一部を紹介しましょう(原文ポルトガル語を筆者翻訳)。

「クリスチアーノ・ロナウドの空港が出来たばかりでいきなり事故ったね」
「メッシが彫刻家だなんて知らなかったよ。しかし、良くできているね」
「BUSTO(胸)とBOSTA(糞、粗悪品)がこんなに似ているなんていままで気が付かなかったよ」

確かに写真を見ると、あえて変な胸像にして話題を狙ったのではないかと思ってしまいます。

色々なひとからジョークのネタにされています。

観光産業

かつては砂糖産業で発展したマデイラ諸島ですが、現代における主な産業は観光業です。ポルトガル航空がリスボンから直行便を出しており、所要時間1時間45分、往復3万円程度で行けるようです。時間的には東京から福岡まで飛行機で行くのと同じ感覚ですね。ブラジルのルーツを求めて、一度訪れてみたい場所ではありますが、欧州にでも引っ越さない限り実現しなさそうです。

関連記事

ブラジルを語る上で外すことのできない存在、サトウキビ
ブラジル発展の大きな要素となった砂糖産業。主要な生産地はバイーア州、ペルナンブーコ州でした。今でもブラジルのサトウキビの生産量は世界一で、二位のインドの二倍以上の生産量を誇ります。 先日、ペトロリーナの農家を訪問した際に、サトウキビをご馳走にな...
ブラジル・カーニバルとサトウキビ栽培の関係
レシフェ、オリンダのカーニバルはブラジル三大カーニバルの一つであると言われています。 (①リオ、②サルバドール、③レシフェ、オリンダ) カーニバルの時に、集団で登場する一風変わったキャラクターの一つに、Caboclo de lanca(カボク...