ブラジル国歌とその歴史

ブラジル国歌は全部で4分弱の長さがあります。2014年にブラジルで開催されたサッカーW杯の国歌斉唱の時は短縮バージョンが流されたのですが、伴奏が終わっても選手、会場の客がアカペラで歌い切ったというのが話題になりました。

そんなブラジル国歌ですが、最近は学校でちゃんと教えなくなってきているため、若いブラジル人にはブラジル国歌を歌えない人も出てきているそうです。ブラジル国歌の出だしは、ブラジル独立に関連する歌詞が登場します。歌詞の後に興味深い国家誕生の歴史もご紹介していますので、最後まで読んで頂ければ幸いです。

Hino Nacional Brasileiro – ブラジル国歌

作詞 Joaquim Osório Duque Estrada
作曲 Francisco Manuel da Silva

1番

Ouviram do Ipiranga as margens plácidas
静かなるイピランガの岸辺は聞いた
De um povo heróico o brado retumbante,
勇敢なる国民の叫びの響き渡るを
E o sol da liberdade, em raios fúlgidos,
Brilhou no céu da pátria nesse instante.
自由を示す太陽のきらめく光が
この瞬間に祖国の空を輝かした。
Se o penhor dessa igualdade
Conseguimos conquistar com braço forte,
この腕の力で掴み取った平等の証
Em teu seio, ó liberdade,
Desafia o nosso peito a própria morte!
ああ自由よ、その胸に自身の死すら決意する。
Ó pátria amada,
Idolatrada,
愛すべき、心酔すべき祖国よ
Salve! Salve!
ビバ!ビバ!

Brasil, um sonho intenso, um raio vívido
De amor e de esperança à terra desce,
ブラジル、素晴らしい夢、愛と希望の鮮やかな光が
祖国に降り注ぐ。
Se em teu formoso céu, risonho e límpido,
A imagem do cruzeiro resplandece.
美しい空に明るく純粋な十字星がきれいに光っている。

Gigante pela própria natureza,
És belo, és forte, impávido colosso,
その自然は美しく、大胆で、勇敢で、巨大。
E o teu futuro espelha essa grandeza.
未来までその雄大さを映している。

Terra adorada,
Entre outras mil,
És tu, Brasil,
他にはない愛すべき土地、ブラジル。

Ó pátria amada!
愛する祖国よ
Dos filhos deste solo és mãe gentil,
我が国民の優しき母よ
Pátria amada,
Brasil!
愛する祖国、ブラジル!

2番

Deitado eternamente em berço esplêndido,
素晴らしい大地を永久に感じて
Ao som do mar e à luz do céu profundo,
海の音、遥か高い空の光、
Fulguras, ó Brasil, florão da América,
輝くアメリカ大陸の華、ブラジルよ
Iluminado ao sol do novo mundo!
新世界の太陽の光に照らされて
Do que a terra mais garrida
華やぐ輝かしい大地から
Teus risonhos, lindos campos têm mais flores;
あなたのほほ笑みで一面の花が咲く
“Nossos bosques têm mais vida”,
われらの森は生命に満ちている。
“Nossa vida” no teu seio “mais amores”.
あなたの胸に抱かれて、われらの生命は愛に満ちている。
Ó pátria amada,
Idolatrada,
愛する祖国よ
Salve! Salve!
ビバ!ビバ!

Brasil, de amor eterno seja símbolo
ブラジル、永遠の愛の象徴
O lábaro que ostentas estrelado,
星に彩られた国旗は高らかに掲げられ
E diga o verde-louro dessa flâmula
この緑と黄色の旗に言え
– Paz no futuro e glória no passado.
未来の平和と過去の栄光
Mas, se ergues da justiça a clava forte,
力強い正義を立てる
Verás que um filho teu não foge à luta,
我らは逃げずに戦う

Nem teme, quem te adora, a própria morte.
祖国のためなら死をもいとわない
Terra adorada
Entre outras mil,
És tu, Brasil,
他にはない愛すべき土地、ブラジル。
Ó pátria amada!
おお愛する祖国よ
Dos filhos deste solo és mãe gentil,
我が国民の優しき母よ
Pátria amada,
Brasil!
愛する祖国、ブラジル!

ブラジル国歌の歴史

ブラジル国歌成立の背景には、興味深い歴史があります。

ブラジル国歌は1831年に作られました。ブラジル史の年表を見ると、1831年はブラジル皇帝ペドロ1世が退位した年です。

この歌は現在の名前が付けられるまで、いくつか別の名前を経ています。当初この歌は『4月7日の聖歌(Hino 7 de abril)』という名前でした。

これは、ペドロ1世が退位した日付に因んでいます。1831年4月7日、ポルトガル生まれのペドロ1世がブラジルを去って、代わりに息子のペドロ2世に皇位を譲りました。

ブラジル生まれのペドロ2世の即位によって、ポルトガルとの絆が断たれ、ブラジルがブラジル人のものになった記念すべき日です。

冒頭に登場する「静かなるイピランガの岸辺は勇敢なる国民の叫びの響き渡るを聞いた。」というのは、ブラジルの独立宣言として有名なペドロ1世による「イピランガの叫び」から来ていると言われます。

その後、この歌は勝利のマーチ(Marcha Triunfal)』と名付けられ、最終的に現在の『ブラジル国歌(Hino Nacional Brasileiro)』と呼ばれるようになりました。

1889年、デオドーロ・ダ・フォンセッカ将軍がクーデターを起こしたことから、ブラジルは帝政から共和制に移行します。デオドーロ・ダ・フォンセッカ将軍により暫定的に統治されていたブラジルでは、ブラジル国歌を定めるためのコンクールを催しました。

36名のコンクール参加者のうち、レオポルド・ミゲスの歌が選ばれましたが1831年に作られたブラジル国歌が既に人口に膾炙していたため、デオドーロ・ダ・フォンセッカ将軍は、イピランガの叫びで始まる歌を国歌に定め、レオポルドの作曲した歌は『共和制宣言の歌』とみなすことにしたのです。ブラジル国歌は、ブラジル民衆によって「選ばれた」歌という歴史があるのですね。