ブラジルは電力の64%を水力発電で賄っている

ブラジルの有名な自然景勝といえば、イグアスの滝とアマゾン河がすぐに頭に浮かびます。

イグアスの滝(筆者撮影)

どちらにも共通するのは、壮大な規模を湛えるその水量です。ブラジルはこの豊富な水資源を活用して国全体の電力需要の実に68%を水力発電によって賄うことができています(2016年時点)。ついでながら、2011年には水力発電の占める割合は現在よりも高い81%でした。水力発電の割合が下がったのは、2012年から現在までブラジル北東部で続いている干ばつや、2014年から2016年に南東部を襲った水不足によりダムの貯水率が下がっていることが主な要因です。

世界の水力発電所を国別にみると、発電能力上位5件のうち3件はブラジルに建設されたものです。水力発電の規模は、中国、カナダに次ぐ世界3位です(水不足前は世界2位でした)。この記事では、ブラジルの電力を支える代表的な水力発電所3件についてご紹介します。

1位:イタイプダム(発電能力14,000MW)

イグアスの滝観光とセットで訪れる人が多いのが、パラナ河を利用した水力発電所、イタイプダムです。イタイプ水力発電所は14,000MWの発電能力を有しており、ブラジルの発電量の実に19%をカバーしています。イタイプダムは、2012年に中国の長江(揚子江)を利用して建設された「三峡ダム(発電能力18,200MW)」が運用開始するまでは世界最大の水力発電所でした。このダムは、ブラジルとパラグアイの二か国によって共同管理されています。ダムの建設が完了したのは1982年で、至極どうでもよいですが筆者と同い年なので親近感が湧きます。ダムで発電された電力はブラジルとパラグアイが仲良く半分で分けていますが、実際にはパラグアイは小国なので電力を使い切れておらず、余剰電力はブラジルに売却しています。

イタイプというのは、先住民の言葉トゥピ・グアラニ語で「歌う石(a pedra que canta)」又は「水が音を立てる石(pedra na qual a água faz barulho)」という意味があります。もともとこの地にあった同名の小さな島の名前に由来しているそうです。

イタイプダムと筆者

イタイプダムの観光バスと筆者母

2位:ベロモンテダム(発電能力11,233MW)

ベロモンテは、ブラジル北部パラ州シングー河を利用した建設途上のダムです。2019年の完成が見込まれており、完成すればブラジルが単独で有するダムで最大規模、また、世界で3番目に大きいダムが誕生することになります。発電能力は11,233MWで、実に60百万人の電力需要を賄うことのできる規模です。このうち発電所のあるパラ州で利用される電力は5%に満たない程度で、残りはブラジル全土に配電されています。

ベロモンテは、その建設を巡る反対活動が多発し、物議をかもしたダムのひとつです。反対運動の一翼を担ったのは、シングー河の畔にすむインディオたちでした。ダムの建設により、彼らが古くから住んでいた場所から立ち退きをせざるを得ないためです。また、ダムの建設による自然環境への影響が無視できないとして、環境保護団体からの反対も強いです。実際に、ダムの建設後に下流で魚が捕れなくなるといった問題がありました。反対運動は国際的な問題に発展し、映画『アバター(Avatar)』などで有名なジェームズ・キャメロン監督や女優のシガニー・ウィーバーも2010年にブラジリアで行われたダム建設反対運動に参加しています。この時、キャメロン監督はダムの建設による環境破壊を、映画『アバター』の惑星パンドラ侵略と重ねたコメントをしています。

ベロモンテというのは「美しい山」というポルトガル語で、インディオに敬意を表してこの名前が付けられたと言います。

ダム建設に反対するインディオ

Wikipediaより

3位:トゥクルイダム(発電能力8,370MW)


Wikipediaより
ブラジル北部、パラ州の州都ベレンの南にトゥクルイ(Tucuruí)という町があります。このトゥクルイ市に建設されたダムは、トカンチンス川を利用したもので、現時点でブラジル単独では最大のダムです。ダムはイタイプダムの完成から2年後の1984年に完成しました。2008年に大規模な改築を実施し、発電能力を従来の2倍の8,370MWに引き上げています。今後さらなる拡張を予定しており、この拡張計画が実現すれば、発電能力は10,500MWに達することが見込まれています。

水力発電の利点と欠点

ブラジルの水力発電について紹介したので、ついでに水力発電の利点と欠点をおさらいしておきましょう。

利点

  • 化石燃料が不要なため燃料価格の相場に影響を受けない。
  • 自動化が進んでいるためオペレーションコストが低い。
  • 再生可能エネルギーのひとつで大気汚染が無く、また地球温暖化の原因とならない。
  • 河の水量調整により、下流で灌漑農業を営むことを容易にする。

欠点

  • ダムの建設に際して、水没する地域が発生する。これに伴い、河畔の住民の退去が必要。
  • 河の畔の生態系を破壊する。
  • 河底への土砂堆積。
  • 絶滅する魚が出ることにより、マラリアを媒介する蚊の増殖など。
  • 電力消費地より遠い場所に建設されることが多く、電線のコストが多額となる。