ブラジル小売業界の雄、ポン・ジ・アスーカル

ブラジルでポン・ジ・アスーカルというと、リオデジャネイロの観光地が有名ですが、Googleで「Pão de Açúcar」と検索すると観光地ではなく、小売業大手「ポン・ジ・アスーカル」のサイトが一番上に出てきます。

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「ポン・ジ・アスーカル」とは、リオの観光名所をブランドマークとしたスーパーマーケットのチェーン店の名前で、運営会社のブラジル流通会社(Companhia Brasileira de Distribuição)、通称「ポン・ジ・アスーカル・グループ(Grupo Pão de Açúcar)」は、ブラジル最大の小売企業です。同社は、ブラジルでは頭文字をとって、GPAと呼ばれることが多いので、この記事でも以下その表記に従います。

ブラジル小売業界の売上順位

ブラジル・スーパーマーケット協会(Abras)が毎年公表しているランキング(Ranking Abras)によると、ブラジル小売業界の売上順位は以下の通りです。

順位 企業名 2015年売上高
(百万レアル)
2016年売上高
(兆円)
店舗数
1 GPA 76,933 2.54 2,181
2 CARREFOUR 42,701 1.41 288
3 WALMART 29,323 0.97 485
4 CENCOSUD 9,267 0.31 222
5 ZAFFARI 4,508 0.15 31

GPAがずば抜けて売上が大きいように見えますが、GPAの売上高には家電量販店の売上も含まれています。純粋にスーパーマーケット部分のみを抜き出すと売上高は40,242千レアルとなるので、2位の仏系カルフールと大体同じくらいの規模であることが分かります。GPAの店舗数がやたらと多いのは、GPAがコンビニタイプの店舗を多く所有しているのに比べて、カルフールがハイパーマーケットと呼ばれる広大な販売面積のある店舗を所有していることが主な背景にあります。ちなみに、4位のCENCOSUDという会社は日本ではあまり馴染みが無いですが、チリ資本の会社です。

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GPAの起源

GPAの起源は、ポルトガルからの移民であるヴァレンチン・ジニス1948年に創業した菓子屋でした。ヴァレンチン・ジニスは、1929年にブラジルのサンパウロに到着しています。ブラジル到着から19年経過した1948年に念願だった自分の店をオープンしたのです。店の名前は、ヴァレンチンがブラジルに船で到着した時に初めて見た絶景に敬意を表して、「ポン・ジ・アスーカル」と名付けました。

GPAの成長

その後、ヴァレンチンの事業は軌道に乗り、1959年には菓子屋の前にスーパーマーケット1号店をオープン。スーパーマーケットは順調に店舗数を増やし、1968年にはサンパウロを中心として65店舗を構えるまでになり、ポルトガル、アンゴラ、スペインなどへの海外進出も始めました。

1970年にGPAは家電量販店を買収し、ハイパーマーケット「ジャンボ」をオープンします。また、1978年には3つのスーパーマーケットチェーンを買収しました。1981年には傘下の小売店を統合し、ブラジル流通会社(Companhia Brasileira de Distribuição)に名称変更しています。1980年後半に、「ジャンボ」を閉店して、代わりにハイパーマーケットの「エストラ(Extra)」を1989年にオープンします。

アビリオ・ジニスの登場と株式上場

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1980年後半には、ヴァレンチンの長男であり、ブラジルの著名な実業家でもあるアビリオ・ジニス(Abilio Diniz)が社長業を継ぎ、リストラを敢行しています。1993年、アビリオはGPAの最大の株主となり、兄弟たちを経営から遠ざけ、代わりに自分の子供を経営陣に入れました。

1995年には株式公開を行い、1.1億ドルを集めています。食品小売業界がサンパウロ市場で上場した初めてのケースです。1997年には、ニューヨーク証券取引所でも株式公開を行い、1.7億ドルを集めています。その後もGPAは、買収を繰り返して成長を続けます。

仏カジノグループの登場

1999年にフランスの小売企業カジノルグープが、GPAの株式を25%取得して少数株主になりました。2005年には、カジノグループが持ち分を増やし、アビリオと50%ずつ所有します。

2009年には、家電量販店のポント・フリーオ、カーザス・バイーアを買収し、南米最大の流通企業の地位につきます。

2011年、アビリオは業界2位の宿敵カルフールとの合併話を持ち出し、カジノグループとの関係をこじらせます。カジノグループは当然のごとくこの提案を却下したため、アビリオの提案は日の目を見ることはありませんでした。

2013年、アビリオはカジノグループと袂を分かち、GPAの経営から手を引くことを公表しました。これにより、ジニス家による65年の経営の歴史に終止符が打たれました。その後、アビリオ・ジニスは、ブラジル食品メーカー大手のブラジルフーズの役員に就任したり、カルフールの株主になったりと何かと世間を驚かせています。

GPAの業績

直近9年間のGPAの業績は以下のグラフの通りです。2009年に家電事業を買収して、急激に売り上げ規模を2倍以上に伸ばしましたが、家電事業はブラジル経済の停滞の影響を受けて、2013年をピークに伸び悩んでいます。一方で、食品事業の方は、順調に業績を伸ばしています。

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利益は2014年まで順調に伸ばしていましたが、2015年から経済停滞の影響を受けてマイナスに転じています。
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2007年からのGPAの業績をエクセルにまとめてみました。興味のある方は、以下のリンクからダウンロードしてご確認ください。なお、情報は主にGPAのIR情報から拾っております。
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