聖人の衣服が大衆化した「ボンフィン・リボン」の歴史

サルバドールを訪れる者は、カラフルなリボンを必ず一度は目にすることでしょう。これは、セニョール・ド・ボンフィン・リボン(as fitas do Senhor do Bonfim)と呼ばれるリボンです(以下、「ボンフィン・リボン」といいます)。

サルバドールを歩いていると、教会の門にこのカラフルなボンフィン・リボンが巻き付けられていたり、待ちゆく人が手首に巻き付けたりするのを見かけます。今では「サルバドールのシンボル」ともいえるこのボンフィン・リボンですが、リボンそのものや、リボンをデザインした関連商品がみやげ物屋で販売されていて外国人にも人気があります。

リボンには以下の通りの文章が記載されています。
Lembrança do Senhor do Bonfim da Bahia
バイーアのセニョール・ド・ボンフィンの記念

もともとは聖人の衣服だった

その誕生の起源は宗教的なものでした。かつて、カトリック信者は聖人の衣服を細かくリボン状にして厄災からの守護や幸運を願う習慣がありました。聖人の衣服は数が限られていますので、いつしか衣服ではなくリボンで代用することになったのです。

願い事を叶えるリボン

現代においても、ボンフィン・リボンは「願い事を叶えてくれる」と信じられています。願い事を叶えるためには、左手首にリボンを2周巻き付け、固結びをしながら声に出さずに願い事をします。3回固結びをすることになっており、願い事も3つまで叶うそうです。ナメック星のシェンロンみたいなものですね。リボンが自然に切れたら願い事が叶うと言われています。願い事を叶えるためには、購入したリボンではなく、プレゼントされたリボンを使うというルールもあります。

ボンフィン・リボンの歴史

ボンフィン・リボンは、今から遡ること2世紀も前の1809年から製造が始まりました。ボンフィン教会のマヌエル・アントニオ氏が教会活動資金の募集のために製造販売したのが始まりです。当初、リボンは絹が利用されており、イエス・キリストの右腕と同じ長さ(47cm)で、文字も手書きで記入され、富裕層のみを対象に配布していました。

次第にリボンの工業化が進み、安価に手に入るようになりました。また、「お守り」としての人気が高まり、富裕層以外にもボンフィン・リボンが普及していきました。

現在手に入るリボンは、ナイロンとポリエステルを使用した工業生産のものです。また、文字は印刷で長さも47cmではなくなりました。しかも、あまり知りたくなかったのですが、この「サルバドールのシンボル」ともいえるリボンは消費地サルバドールではなく、サンパウロの工場で製造されているのです。サルバドールの有名な民芸品売り場、メルカードモデーロでは10本1レアル(約35円)程度で買うことができます。

また、外国人を見かけるとバイアーノの商人が近寄ってきて、このボンフィン・リボンを腕に巻きつけようとしてきます。大抵、「プレゼントだから、気にしないでもらって」とフレンドリーな態度で近づいてきますが、後で市価の2~3倍ものアクセサリーなどを売りつけて来るので、無視するほうが無難です。

リボンの色とオリシャー(神)

サルバドールでアフロ・ブラジリアン文化に触れた方は、「オリシャー(Orixá)」という単語を聞いたことがあるかもしれません。これは、主にサルバドールで普及している土着宗教「カンドンブレー」の神々のことを指しています。

ボンフィン・リボンの色は、オリシャーを象徴しています。ミドリは、Oxossi。青はIemanjá。黄色はOxumといった具合です。

ボンフィン・インスパイア系

筆者も20代の頃に好きだった「ラーメン二郎」。「ラーメンではなく、二郎という食べ物である」と言われているそうです。そして、「ラーメン二郎」を模倣した「ラーメン二郎インスパイア系ラーメン」なるモノを出す店が各所にオープンしています。

同じように、「ボンフィン・インスパイア系リボン」というものが存在します。有名なのは、サンパウロのアパレシーダ(Nossa Senhora Aparecida)、リオデジャネイロのサン・ジョージ(São Jorge)です。以前にこのブログでもご紹介したことがある有名な聖人です。

セニョール・ド・ボンフィンって誰?

セニョール・ド・ボンフィンは、文法的にみると「ボンフィンのセニョール」という意味です。セニョールというのは男性を敬う時に使うことばですが、単独で使用された場合、「Senhor Jesus Cristo(主イエス・キリスト)」という意味になることがあります。ついでながら、ブラジルの教会の名前でよく見かける「Nossa Senhora(ノッサ・セニョーラ)」というのは、「私たちの淑女」すなわち「聖母マリア」を示しています。

ボンフィン(Bonfim)というのは、「Bom = 良い」と「Fim=終わり」が結合した言葉です。つまり、「セニョール・ド・ボンフィン」というのは「良い終わりの主イエス・キリスト」と訳すことができます。これは、十字架の上で死に、三日後に復活したことを示すので、意訳するとすれば「復活の主イエス・キリスト」と言う意味が妥当かと思います。

バイーアのボンフィン教会はポルトガル軍人が建設?
サルバドールの旧市街(ペロウリーニョ)から北に8キロほど行った場所に、ボンフィン教会(Basílica do Senhor do Bonfim)という有名な教会があります。ボンフィン教会と言えば、サルバドールを訪れる旅人が必ず目にするであろう、ボンフ...