ブラジル独自の職業デスパシャンチ

ブラジルでモノを輸出入する時、免許を取得する時などに世話になるデスパシャンチ(despachante)という職業の人が居ます。ブラジルは、お役所仕事の効率が悪いことで有名ですが、デスパシャンチを活用することで、それを改善することが期待できます。

デスパシャンチとは何か

デスパシャンチというのは、デスパッショ(処理、決裁)という単語に由来しているもので、もともと輸出入の通関手続代行業者のことを差していました。現在では通関手続きの他に、免許申請、ナンバープレート発行、車両売買、その他の連邦、州、市への各種申請手続き等、デスパシャンチの業務は多岐に渡ります。

デスパシャンチの種類は大きく3つに分類することができます。

通関代行業者(Despachante aduaneiro)

税関での通関業務に精通し、運送業者と荷送人の橋渡しをします。

書類代行業者(Despachante documentalista)

連邦、州、市への各種申請手続きの代行業務を行います。日本人は、運転免許の取得時に世話になることが多いです。

交通関係代行業者(Despachante de trânsito)

車のナンバープレートの発行や、売買手続き、登録業務の代行を行います。

デスパシャンチの必要性

ブラジル人曰く、「デスパシャンチに頼まなくても手続きはできるが、手続き完了までに気の遠くなるような時間と労力が必要になる。」という現状があります。日本でも、行政書士のように官公署に提出する書類などを作成するプロが居ますが、ブラジルのデスパシャンチと行政書士は「イコール」ではありません。その背景には、ブラジル独特の文化があります。

アミーゴか、そうではないか。

ブラジルに来て、アミーゴ(友人)の大切さを知りました。ここでいうアミーゴは、一緒に遊んでくれるとか、苦楽を共にしてくれるとかそういう類のアミーゴではなく、困った時に助けてくれるアミーゴです。

例えば、何のきっかけで耳の中が炎症を起こして膿が出てきたとします。日本であれば耳鼻科に行けば、どんなに待たされたとしても数時間後には診察してもらえますが、ブラジルでは耳鼻科に電話すると、「込み合っていますので、1ヵ月先でないと予約が取れません。」ということを普通に言われてしまいます。

もし、知り合いに医者が居れば、「じゃあ、今日の午後の診察終了間際に来てください。」と言ってもらえることがあります。症状が医者の管轄部外であったとしても、彼の友人の医者に口利きしてくれることもあり、いずれにしろ正攻法で行くよりも遥かに早く診察してもらえる可能性があります。イザという時に助かるのは、医者の他にも、役所務めの人、警察、弁護士、判事などが挙げられます。

デスパシャンチには、関連する官公署内に多くのアミーゴが居ますので、デスパシャンチ経由で書類申請することで、正攻法で申請するよりも優先的に処理してくれる可能性があります。

時間は金で買う。

ブラジルの病院や役場の待合室では、順番待ちをする人が途絶えることがありません。ブラジルでは、公共機関における慢性的な人員不足状態が良く見うけられます。サービスを受けるためには、忍耐強く自分の番が来るのを待つ必要があります。

例えば、運転免許証を取得する時、書類に少しでも不備があると、その日は申請ができない可能性が高まります。ちょっとした不備があっただけで、わざわざ交通局(DETRAN)まで足を運んで、長蛇の列を待った時間は無駄になります。この点、経験豊富なデスパシャンチに事前チェックを受ければ安心です。それに、交通局(DETRAN)には一般窓口とは別にデスパシャンチ専用の窓口もあると聞いたこともあります。

ブラジルで時間を無駄にしないためには、デスパシャンチやエージェントにお金を払って、橋渡しをしてもらう、公的機関ではなく高所得者層を相手にする民間企業の力を借りるしたたかさが不可欠です。

間接的にワイロを支払っている?

昔よりは大分マシになりましたが、ブラジルには贈収賄の慣行があります。知り合いに聞いた話ですが、ナンバープレートを発行するのに、直接、交通局(DETRAN)で申し込んだところ、数カ月かかっても発行してもらえなかったのに、デスパシャンチに頼んだらすぐに発行してもらえたそうです。彼はデスパシャンチには、手数料80レアル(約2,500円)払ったのですが、後でデスパシャンチに聞いたところによると、そのうち40レアルは、陸運局の人の袖の下に入れたとか入れなかったとか。

余談ですが、ブラジルでは袖の下を使うことを、Molhar a mão(手を濡らす)と表現します。