ブラジル北東部におけるカレー文化開拓小史Ⅱ

ノルデステ(ブラジル北東部)の片田舎に住むお手伝いのおばちゃんが、カレー文化に目覚めてから布教活動に至るまでの「使徒行伝」ならぬ、おばちゃん行伝の続きをご紹介します。

弟子が増える

気持ちの良い土曜日の朝、「コンコンコン」と関根さんの家の玄関扉を叩く音がしました。誰だろうと訝る関根さんが扉を開けると、そこには細身で浅黒い若い女が立っていました。

突然現れたその若い女は、髪の毛チリチリお手伝いおばちゃんの娘で、おばちゃんが何の予告もなしに一緒に連れてきてしまったそうです。

娘は、突然の訪問の理由を言葉に出しませんでしたが、関根さんはその娘の顔を見た途端その訪問の真の目的を悟りました。彼女の顔にはこう書いてあったそうです。

「カレエ、食わせろ」

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仕方なく、関根さんは日系人の経営する商店に行き、カレーの材料を購入し、カレーの作り方を娘に手ほどきしてあげました。娘は、カレーの作り方を覚えるというよりも、食べる方の専門だったようで、料理の過程はあまり興味を示さなかったようですが、カレーについては大喜びで食べていきました。こうなると、どちらがお手伝いさんなのか分からないですが、関根さんはそういうのを面白がる人なのです。

こうして、カレー信徒がまた一人増えました。

カレーを広めよう

ブラジルでは、日本食が大変な人気で、日本食だったら高い金を出しても良いと考えるブラジル人が多くいます。

ぼくの住む町には、「ジャップ(Jappa)」という名前の高級日本食レストランがあります。このジャップは、所得中級層以上の家族やカップルなどがお洒落な雰囲気を楽しむ場所としてにぎわっています。

日本食レストランでは「スシメン」と呼ばれるブラジル人が、日の丸のはち巻きを締めて寿司を握っています。日の丸はち巻きには「必勝」「日本」などの文字が入っているのですが、漢字が読めないのか、上下逆さまに締めているスシメンもいます。

さほどに日本食が人気なのに、メニューはどこも寿司やヤキソバばかりで、カレーを売る店が一つたりともありません。ブラジル人にカレーを食べてもらうと、たいてい気に入ってもらえますし、ブラジルには、めしにフェイジョン豆やフェイジョアーダをぶっかけて食べる習慣があるので、カレー文化が根付く素養は十分にあると思うんですよね。

フェイジョアーダ
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街中でカレーの店を出したらさぞかし売れるのではないか、一皿20レアル(約600円)は固いのではないかと妄想してしまうのですが、実行には移せていません。

関根さんには申し訳ないですが、お手伝いおばちゃんには辞めてもらって代わりに、娘と一緒に必勝はち巻きを締めてもらいたいとおもいます。