価値観が変わる、ブラジル流の名刺交換

日本では名刺交換のマナーが細かく決まっています。名刺は両手で持ち、名刺入れの上に乗せてお辞儀をしながら渡します。相手の名刺をもらう時は、「頂戴いたします。」というお決まりの文句があり、頂いた名刺は机の上に並べておきます。その他にも、いろいろな決まりがあるのが日本の名刺交換のマナーです。ところ変わって、ブラジル流の名刺交換は、日本人からすると価値観が変わるくらいやり方が異なります。

名刺はビジネスマンの魂?

「刀は武士の魂である」という考え方は、江戸時代中期以降から幕末にかけてできた概念であるというのを司馬遼太郎の書いた本で読んだことがあります。戦国時代においては単なる武器であったのが、いくさのない時代になり、礼儀作法がうるさく取り決められる中で、武士階級と百姓とを隔てるものとして、刀が「武士の魂」に仕立て上げられたというわけです。礼儀作法が細かく定められているという意味で、日本における名刺は、単なる名前が書いてあるカードではなく、ビジネスマンの魂であるともいえます。

トランプ?手裏剣?

一方のブラジルでは、名刺(cartão de visita)は単なる名前が書いてあるカードとしての価値しかありません。渡し方も千差万別で、片手でシュッと渡してくる人も居れば、テーブルに座った状態でカジノ・ディーラーがトランプを配るようにカードを配る人も居ます。名詞を配る際に回転を付けて手裏剣のように机をすべらせながら配ってきた人が居て、受け取る人の目の前でピタッと止める技には感心しました。

2016-09-05_2045
※キングダム風効果音

日本では受け取った名刺は、名刺入れにしまうか、机の上に置くのがマナーですが、ブラジルでは、受け取ったそばからワイシャツのポケットにねじ込んだり、ズボンのポケットに入れたりする人が居ます。

以前、銀行員が来客として勤務先に来たのですが、彼は会議中にこちらが渡した名刺を机の上で回転させながら、遊んでいました。日本の学生が授業中にペンを回すようなもので、特に意味のないことですが、日本で同じことをやったら大変失礼に当たる行動です。

名刺は単なる紙

ブラジルに来て間もない頃、日本風に両手で名刺を持って、名刺を差し出しながら「よろしくどうぞ」とブラジル人に挨拶していたのですが、これは誤りであることを後になって知りました。

日本風の名刺の渡し方だと、目線が名刺の上に行きがちですが、ブラジル流ではしっかり目を見ることが大切です。そして、名刺を渡すことなどよりも、まず先にすべきことは自分の名前を名乗り、固い握手をすることなのです。

名刺交換の際に、こちらが差し出した名刺を直ぐにワイシャツのポケットに入れて、「で、きみの名前は?」と聞かれて衝撃を受けたことがあります。一瞬、「名刺見ろよ。」と思ったのですが、直ぐに考えを改めました。彼の考えを推測すると次の通りだったのではないかと思います。「名刺なんかは、後で電話したりメールしたりするときに見ればいい。いま、私はあなたと会っているのだから、あなたから直接名前が聞きたいのだ。」

それからというものの、名刺交換の際には、まず目を見ながら名前を名乗り、握手を交わしたあとに、名刺を出すようにしています。