ブラジル原産カシューナッツの知られざる実態

日本でもビールのお供として馴染みのある「カシューナッツ」ですが、それが元々どういう植物なのか、見たことがないという方も多いのではないでしょうか。カシューナッツの樹のことを、ブラジルでは「カジュエイロ(cajueiro)」と呼び、果実は「カジュー(caju)」と呼びます。

原産地はブラジル

筆者の住むブラジル北東部は、このカジューの原産地であり、しばしば農家の畑にカジュエイロが植わっているのを見かけます。カジュー(caju)という名前は、インディオのトゥピ・グアラニ語のcaá-ju(意味:葉っぱの森)に由来するという説、同じくトゥピ語のacaiu(意味:実のなるクルミ)に由来するという説などがあります。英語ではCashew(カシュー)と呼ばれ、その発音の方が日本では馴染みがあります。ブラジルでは主に北東部(ノルデスチ)で栽培されており、8月~1月が収穫期にあたります。

カジューの見ため

カジュエイロには、写真のような果実がなります。

カジューの下に小さくついた勾玉(まがだま)の様な部分、この中に例の「カシューナッツ」が入っています。この部分を切り取って、加熱処理し、皮を取り除いたのが日本で流通しているカシューナッツなのです。

カシューナッツの上についているオレンジ色の美味しそうな果実は、果実ではなく偽果又は仮果(pseudocarp)と呼ばれる部分です。ブリタニカによると偽果とは、子房(めしべ)以外の部分が生長して果実のようになった部分のことを言います。

つまり、カシューナッツの入っている部分が「果実」で、オレンジ色の花柄(かへい)の部分が「偽果」を構成しているのです。オレンジ色の部分は果実に見えますが、これは、本来果実を支える枝の部分なのだということです。

下の写真のカジューを見ると、偽果と果実の違いが分かりやすいです。
面白いことに、果実であるカシューナッツが先に大きくなり、花柄の部分は後から生長するのです。

果肉はどんな味がするのか

オレンジ色の果肉部分はビタミンCと鉄分が豊富に含まれています。表面を触るとベタベタしています。ブラジル北東部の少年少女は、この果肉部分にかぶりついて、果肉に含まれるジュースをちゅうちゅうします。果汁が多く含まれているのですが、洋服に果汁が付くと洗っても落ちなくなるので注意が必要です。果汁には、鉄分が多く含まれているため、食べ慣れていない日本人には、「カジューは余り好きじゃない」とニガテに思う人が多いです。

ブラジル人は、この果肉部分をジュースにしたものを好んで飲みます。市場やスーパーで生の果実が販売されている他、加工食品としては100gの冷凍ピューレ、砂糖を加えた果汁ジュース、アイスクリームの味付けなどがあります。

サンパウロの市営市場で販売されるカジュー

生のカシューナッツは毒!

カジューの果実は、通常カシューナッツと果肉が一緒になって販売されていますが、家庭でカシューナッツの部分を不用意に取り出そうとすると、大変な目にあいます。カシューナッツの皮は二重になっており、その中にはウルシオールと呼ばれる毒性の成分が含まれているのです。

ウルシオールに触ると、肌がアレルギー反応を起こして炎症します。あまりいないとは思いますが、自宅でカシューナッツを製造しようとする人は、必ず手袋をはめて作業する必要があります。

インディオは、この毒性を含む液体を除去するために焚き火の中でカシューナッツを焼いたと言います。焼いて毒を蒸発させた後のカシューナッツの皮をむくと、白っぽいカシューナッツが出てきます。

皮をむいたカシューナッツは、素焼きにするか油で揚げて食用にします。ブラジル人は、カシューナッツをそのまま食べたり、シリアル、クッキー、ケーキ、サラダなどに乗せて食べたりします。

素焼きのカシューナッツ

揚げたカシューナッツ

カシューナッツとカカオのクッキー

果肉を捨てる国も

ブラジル原産のカジューは、ポルトガル商人によって世界中に広まりました。インド、ベトナムでは、ブラジルよりもカジューの生産量が多くなっています。ついでながら、Google翻訳で調べたところカジューは、ヒンディー語ではकश्यु(カシュゥ)、ベトナム語でhạt điều(ハッディェウ)と翻訳されました。トゥピ語が世界中で使われているという点に興味深いものがあります。

カジューの経済的価値は主にカシューナッツの部分にあり、国によっては果肉部分を捨ててしまう場合もあります。(果肉とは、オレンジ色の部分。偽果なので果肉という呼び方が正しいのか自信がないのですが、以下では便宜上、果肉と呼びます)

ブラジルのように、カシューナッツと果肉の両方のマーケットがある国は珍しいのです。捨てられてしまう果肉部分を粉末に加工して、糖分として使うというアイデアも聞いたことがあります。

果肉部分には、ビタミンCが豊富で100gのピューレだと一日に必要な量の2.5倍近くのビタミンCが摂取できます。皮膚炎、口内炎を予防する効果のあるナイアシンは必要量の10%強が含まれています。カシューナッツ100gでは、一日に必要なマグネシウムの90%、亜鉛の70%、リン80%が摂取できます。

カシューナッツの製造工程

Youtubeにカシューナッツの製造工程を説明した動画があります。興味がある方はチェックしてみてください。