ボルサ・ファミリア(Bolsa Família)とは何か

2016年5月11日に実施される上院議会において、罷免される可能性が非常に高いジウマ大統領はメー・デー(2016年5月1日)において、貧困層への生活保護給付金であるボルサ・ファミリア(Bolsa Família)の支給額を平均9%上昇すること、また、個人所得税を5%下げることを公表しました。

ジウマ大統領は、ボルサ・ファミリアの調整は、2015年8月に議会の予算を通っており、最近考え出された策ではないことを強調しています。タイミング的には、残り10日間しかない職務期間中に、国民の人気とりのための最後っ屁をかましたように見えてしまうので、その批判をかわす意図があったものと考えられます。

良い機会なので、このボルサ・ファミリアというプログラムが、どのような仕組みなのか、おさらいしてみましょう。

主に公的銀行CAIXA(カイシャ)の公式ホームページから、翻訳してまとめました。なお、以下の金額は、ジウマ大統領が公表した平均9%の調整前の情報です。

ボルサ・ファミリア(Bolsa Família)とは何か

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ボルサ・ファミリア(Bolsa Família)は、ブラジルではボウサ・ファミーリアと発音されています。ボウサ(Bolsa)には、財布、ふくろ、お金という意味があります。ファミーリア(Família)は、家族です。直訳すると、「家族の財布」という意味。

ボルサ・ファミリアは、貧困に苦しむ人々が貧困から脱却するためのプログラムです。貧困家庭の人々が、飢えることなく、教育、医療を受けることを実現することを目的にしています。ボルサ・ファミリアは、ルーラ政権が元々あった複数の給付制度をまとめて2003年から導入されたプログラムです。

対象者

ボルサ・ファミリアは、貧困家庭(As famílias pobres)及び極貧家庭(As famílias extremamente pobres)を対象にしています。

極貧家庭とは、月間所得が一人当たり77レアル以下(約2,400円)の家庭を差します。また、貧困家庭とは、月間所得が一人当たり77レアル超154レアル(約4,700円)の家庭を差します。また、家庭の範囲は本人が妊娠している、または子供が0歳~17歳の場合を差します。

プログラムへの参加方法

ボルサ・ファミリアのプログラムに参加するためには、ブラジル連邦政府の社会プログラム制度に登録する必要があります。プログラムに登録すると、直ぐに入金されるわけではなく、社会開発飢餓撲滅省(Ministério do Desenvolvimento Social e Combate à Fome)の審査を通過した場合に補助金が入金されます。

給付金

①基本金:極貧家庭は、毎月77レアル(約2,400円)を受け取ることができます。
②変動金:貧困家庭及び極貧家庭では、扶養家族の人数に応じて、毎月一人当たり35レアル(約1,100円)を支給し、扶養家族は最大5人まで増やすことができます(175レアルまで)。
③青年変動金:貧困家庭及び極貧家庭において、16歳~17歳の青年が扶養家族に居る場合には、毎月一人当たり42レアル(約1,300円)までを支給します。最大2人まで(84レアルまで)支給します。

④極貧脱却援助金:極貧家庭では、所得水準に応じて極貧脱却援助金が支給されます。

極貧家庭は、①~③の補助金を加算し、月額最大336レアル(約1万円)とすることができます。その他に、④極貧脱却援助金の支給を受けることができます。

ボルサ・ファミリアの功罪

ボルサ・ファミリアについて、中流層の人々が評価しているのをあまり聞いたことがありません。「彼らは、ボルサ・ファミリアでドラッグを買うのさ。」「給付金をもらうために、子供を産む人が居る。」「ボルサ・ファミリアがあるから、人々は昔よりも勤勉に働かなくなった。」等の批判は枚挙にいとまがありません。また、所得水準からみると、ボルサ・ファミリアの対象から外れる人が申請していたり、なんと飼い猫を扶養対象に設定してプログラムに申請したりする不正問題も発生しています。

社会開発飢餓撲滅省のテレーザ・カンペーロ大臣(Tereza Campello)によると、ボルサ・ファミリアに対する批判の多くは貧困層への「偏見」であり、必ずしも実態を表したものではないと評価しています。テレーザ氏は貧困層にも勤勉に働く人が大勢居るものの、十分な教育が受けられないことにより、自活する力が低い点に問題があると評価しています。

ぼくも、教育の重要性は、疑う余地のない点であると考えますが、ボルサ・ファミリアの問題は「支援の仕方」にあるのではないかと思います。素人考えからすると、極貧層はお金で支援するよりも学費の免除や教材の支給などの物質的な支援の方が効果がありそうに感じます。投資回収に時間がかかる教育よりも、目先の空腹のためにお金を使ってしまうでしょうから。

補助金を支給するにしても、貧困層から立ち直るためには、補助金額が少なすぎると感じます。毎月の補助金が300レアルだったとすると、一日当たりに家族で使える金額はたったの10レアル(約300円)です。この金額だと、三食たべることもできなさそうです。何もないよりは全然マシなんだろうとは思いますが。

前述のテレーザ大臣は、ボルサ・ファミリアの予算はGDPの0.5%を占めるにとどまり、歳出増加の要因になっているというのは勘違いであると指摘しています。むしろ、貧困層の人々が経済活動を行うことにより、ボルサ・ファミリアへの支出額以上の経済的効果があるものと考えられています。また、ボルサ・ファミリアの実績として、2014年には、60万人がボルサ・ファミリアの支援を卒業することができたということに言及しています。

参考サイト:ヴァロール・エコノミコ

ボルサ・ファミリアの受給者は約50百万人います。ブラジルの人口がおよそ205百万人なので、単純計算すると、4人に1人はボルサ・ファミリアの恩恵を受けていることになります。ボルサ・ファミリアのおかげで4人に1人は、選挙で投票してくれるとなれば、大統領にとってはGDPの0.5%なんて安いもの(?)かもしれません。ボルサ・ファミリアに関連するピアーダ(冗談)は、そのほとんどが選挙と関連しているみたいです。

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