「アルデンテ」はポルトガル語で「歯に」

先日、レストランでスパゲティを注文したところ、ギャルソンから「アオデンチ(Ao Dente)にする?それとも普通のかたさにする?」と聞かれました。

アオデンチ」というのは、「歯(o dente)」という単語に、方向などを示す前置詞「a」を加えたもので、直訳すると「歯に(向かって)」といった意味になります。何のことだかよくわかりませんが、スパゲッティを注文した後に聞かれたので、おそらく「アルデンテ」のことを言っているのだろうと思って、ギャルソンに「アオデンチでお願いします」と頼んだら、予想通り、ほどよい堅さのスパゲッティが出てきました。

このように、ラテン系言語の理解がポルトガル語の理解に役立ったり、逆のパターンが起こったりすることがしばしばあります。

「アルデンテ」とは何か

「アルデンテ(al dente)」とはスパゲッティのゆで上がりの状態を表し、めんの中心部にわずかに芯が残っている状態をいいます。そんなことは、改めて言われなくても知っているという人も多いかと思いますが、ではなぜ、その状態のことを「アルデンテ」というようになったのか、という質問に答えられる日本人は余り多く無いのではないかと思います。

かくいう筆者も、ブラジル人に「アオデンチ」と言われるまで、その由来については思いを巡らしたことすらありませんでした。世の中には、語源を知らずに使っている言葉が馬に喰わせるほどありますが、これもそのひとつかと思います。

イタリア語の「アルデンテ」は、冒頭で説明した通り直訳すると「歯に(向かって)」という意味があります。ゆで上がりの状態を差す際に、歯に対して抵抗がある状態、すなわち「歯ごたえがある状態」を差して「アルデンテ」と呼んでいるのです。

ブラジル人は「毛利」が好き

筆者はブラジルに住んで5年目なのですが、レストランでギャルソンに「アルデンテにするか?」と聞かれたのは初めての経験で、とても意外に思いました。というのも、ブラジル人は茹ですぎて、ふにゃふにゃになったスパゲッティを好んで食べるからです。ふにゃふにゃの状態のことをポルトガル語では「毛利(mole)」と呼びます。あえて漢字を充てましたが、これは筆者の好みの問題で山口県とは何ら関係ありません。

日本では、スパゲティをフォークにぐるぐる巻きにして食べるのが一般的ですが、ブラジル人の食べ方は一寸変わっていて、お皿に乗った毛利なスパゲッティをナイフで食べやすいサイズ(3~4cm)に切り刻んで、それをフォークで持ち上げて口に運びます。

ブラジルの海鮮「毛利」

スパゲッティなのにマカロニ?

日本では、スパゲッティやペンネ、マカロニなどの総称に「パスタ(Pasta)」という呼称が利用されますが、ブラジルで「パスタ」というと「書類を綴じるファイル」が出てきます。

ブラジルで良く見かける「パスタ」

ブラジルでは「パスタ」ではなく「マッサ(massa)」と呼ぶのが一般的です。マッサというのは、小麦粉を練ったかたまりを差し、麺類の総称として使われます。

マッサの中でも一般的なのは、長い棒状のスパゲッティ(Espaquete)ですが、ブラジルではこれを、マカホン(macarrão)と呼ぶことがあります。マカホンは、いわゆるマカロニのことなのですが、ブラジル人は、スパゲッティを呼ぶときにもマカホンと言うことがあります。

ブラジルでも、ペンネやラビオリなど、色々な種類のパスタがありますが、あるブラジル人に聞いたところによると、「あれは、マカホン・シッキ(お洒落なパスタ)で、中流層以上の食べ物である」と教えてくれました。

おいしいパスタは観光地で

ブラジルの観光地に行くと、なぜかイタリア人の経営するイタめし屋に遭遇する確率が上がります。旅行でブラジルを訪れたイタリア人が、ブラジルを気に入って店を出したというパターンが多そうです。イタリア人経営のイタめし屋では、ブラジルで日常的に食べる「マカホン毛利」ではなく、「アオデンチ」のスパゲッティに出会うことができます。
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