カスティーリャ王位継承戦争とアルカソヴァス条約

南米大陸において、なぜブラジルのみがポルトガル語を話す国になったのかという事に興味があったので、色々と調べています。その経緯を調べていくと、スペイン、ポルトガルとの間で結ばれたトルデシーリャス条約が関係していることが分かったのですが、その前段として、カスティーリャ王位継承戦争とその戦後処理を決めたアルカソヴァス条約についても知っておく必要があります。ちょっとマイナーな論点ではありますが、興味のある方は読んでみてください。

カスティーリャ王位継承戦争

1474年にカスティーリャ王のエンリケ4世が死去すると、妹のイザベル1世が王座に就きました。

カスティーリャ王イザベル1世

イザベル1世がカスティーリャ王に就任すると、カスティーリャ王位継承権を巡ってポルトガルとの間で紛争が起こりました。その背後には次のような事情がありました。

まず、カスティーリャ王のエンリケ4世には、フアナと呼ばれる一人娘が居ました。しかし、エンリケ4世は性的不能者で、インポテンツ王と呼ばれていたくらいですから、この一人娘はエンリケ4世の娘では無いということが専らの評判となりました。フアナはエンリケ4世の妻とその愛人ベルトランとの間にできた娘であると言われていたため、カスティーリャ内部では正統な王位継承者として支持されていませんでした。

カスティーリャ内部で支持者を持たないフアナは母方の伯父で、ポルトガル王のアフォンソ5世に救援を求めました。

アフォンソ5世

姪っ子のフアナに助けを求められたアフォンソ5世は男やもめだったので、これ幸いと姪のフアナと結婚するというウルトラCを思いつきました。アフォンソ5世の狙いはフアナとの結婚によりカスティーリャの支配権を得ることにありました。こうして叔父と姪の結婚が成立しました。この時、アフォンソ5世は43歳、フアナは13歳でした。

アフォンソ5世は、フアナの王位継承権を振りかざしてカスティーリャに侵攻しましたが、迎え撃ったイザベル1世とフェルナンド2世の連合軍に敗れました。フアナとの結婚についても、近親婚であるとしてローマ教皇から許可をもらえませんでした。

アルカソヴァス条約

1479年にカスティーリャの王位継承戦争が終結すると、ポルトガルとカスティーリャとの間で「アルカソヴァス条約(Alcáçovas)」が調印されました。この条約では、アフォンソ5世とフアナとの結婚は無効とされ、アフォンソ5世はカスティーリャ王位継承権を放棄すること、アフォンソ5世の息子とイザベル1世の娘が婚約することなどが取り決められました。さらに、大西洋の領土の領有権に関する取り決めも行われました。

アルカソヴァス条約という名称は条約が締結されたポルトガルの地名を取ったものです。

まず、ポルトガルはマデイラ島、アソーレス諸島、カーボヴェルデ諸島とギニア沿岸部の領有権を確立しました。一方のカスティーリャは、カナリア諸島の領有権を確立し、ボジャドール岬以南での航海を放棄しました。この協定は、既に発見した領土のみならず、未発見の領土も予め所有権を決めるという意味で画期的な協定でした。

ついでながら、ボジャドール岬は、カナリア諸島のすぐ傍にあるアフリカ西岸の岬です。エンリケ航海王子が登場するまでは、このボジャドール岬が「世界の果て」として船乗りに恐れられていたというのは有名な話です。地図で言うと、この辺にあります。

このアルカソヴァス条約があったので、スペインはアフリカの喜望峰を経由する東回りの航路ではなく、西回りの航路の開拓に力を注ぐようになるのです。これが、後にコロンブスが新大陸を発見するきっかけとなり、さらには南米大陸の多くの国がスペイン語圏となる原因となったのです。

この後、有名なトルデシーリャス条約が登場するのですが、それについてはまた改めて書きます。

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