カシャッサ、その名前の由来と400の別名

カシャッサ(cachaça)」は、サトウキビから作られる焼酎で、ブラジルの代表的な酒です。カシャッサには、いくつもの名前がありますが、カシャッサの他には「アグアルデンテ(Aguardente)」、「ピンガ(Pinga)」などと呼ばれることが多いですが、それ以外にもカシャッサには400もの別名があることでも知られています。

アグアルデンテとカシャッサの違い

アグアルデンテ」というのは、穀物を発酵させて製造した焼酎全般のことを差しますが、カシャッサは、アグアルデンテのうち、サトウキビで醸造した焼酎のことを差しています。また、カシャッサのアルコール度数は法律で決められており、サトウキビの焼酎だからといって、必ずしもカシャッサと呼べるわけではありません。

アグアルデンテの名前の由来ですが、次のような説があります。カシャッサを蒸留する工程において、サトウキビの絞り汁が蒸発して天井で濃縮され、作業している黒人奴隷の身体に落ちることがあったそうです。主人から鞭打たれ、身体に負った傷あとにその液体がかかると、灼熱(ardor)のような痛みを感じたことから、灼熱の水ということで、「アグアルデンテ(Aguardente)」と言う名前が付いたという説があります。歴史的証拠があるわけではないので、作り話である可能性が高いですが、話のネタとしては面白いです。

カシャッサ(cachaça)」と言う名前の由来は定かではないのですが、カシャッソ(cachaço)と呼ばれる豚に由来するという説があります。この豚の肉は固く、食用にするには、アルコールにつけて柔らかくする必要があったことから、カシャッサの名前が生まれたと考える説です。他には、ラテン語で熟す、料理するを意味するcoquereに由来している説などがあります。

ちなみに、日本では酒豪のことを「うわばみ」と言うことがありますが、ブラジルではカシャセイロ(cachaceiro)と呼びます。カシャッサに限らず、ビールばかり飲んでいる人でも大酒のみはカシャセイロと呼ばれます。
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ピンガとカシャッサの違い

ピンガ」は「カシャッサ」の大衆的な名前です。ブラジルに来る前に日系移民の苦労を描いた北 杜夫の小説『輝ける碧き空の下で』を読んだのですが、物語の中では日々の辛さを紛らすために、日本人移民がよくピンガを飲んでいました。たしか、ピンガはアルコール度が高いわりに値段が安い酒であるという記述があったと記憶しています。その印象から、ピンガは焼酎で言えば甲類、日本酒で言えばワンカップ大関的な位置づけかと勝手に思い込んでいましたが、とくに違いは無いみたいです。

いまではキンドルでも読めるようになった小説『輝ける碧き空の下で』

1908年に第一回ブラジル移民を乗せた笠戸丸がサントスに入港した場面から物語が描かれています。

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ぼくが住むペルナンブーコ州では、ブラジル人が「ピンガ」と言っているのを聞いたことがありません。ピンガではなく、「カシャッサ」と言うか、「イピオカ」、「ピトゥ」等のブランド名を呼ぶのが一般的なようです。地域によって呼び方が異なるのかもしれません。

ピンガという名前の由来は諸説ありますが、蒸留工程において、原料を加熱した際に発生した蒸気が、作業を行う奴隷の身体に付着し、それがしたたり落ちた(Pinga)から、ピンガと呼ばれるようになったという説が有力です。

50以上あるカシャッサの別名

カシャッサの別名を調べたところ、400以上もありました!(出典:ブラジルの大手ニュースサイト、UOL記事)。その内のいくつかをご紹介しましょう。

白いコーヒー

過去において、カシャッサの製造や消費がポルトガルから禁じられたことが何度もありました。ブラジル人達は、カモフラージュするために、エスプレッソ用のデミタス・カップにカシャッサを入れて飲んでいました。このことから、白いコーヒー(café-branco)という別名がカシャッサにつけられました。

三本指の超純正

ブラジルで、広く普及している「コッポ・アメリカーノ」という小型のガラス・コップに指三本分のカシャッサを注いで飲む習慣があったことから、三本指の超純正(Três-dedos-da-puríssima)という異名もあります。

貧乏人のコート

貧乏人のコート(capote-de-pobre)という別名があります。名前の由来は定かではないですが、おそらく安いピンガを飲むとアルコールで体が温かくなるので、コートを着なくても済むという事なのではないかと思います。『Capote de Pobre é Cachaça(貧乏人のコートはカシャッサさ)』という貧乏人をテーマにした曲も存在します。

サビを紹介します。
O pobre vive de qualquer maneira,(貧乏人はどんなことをしてでも生きるのさ)
Dorme numa esteira, sem lençol,(むしろの上で、シーツ無しで寝るよ)
E sua grande alegria nesta vida,(人生で最も嬉しい瞬間は)
É uma partida de futebol,(サッカーの試合)
Num dia de Sol.(良く晴れた日のね)

ガードを緩めるアレ

ガードを緩めるアレ(aquela-que-matou-o-guarda)という別名には、女の子を酔わせて思い通りにしちゃおうという男性の悪意が感じられます。また、悲しみを消すもの(apaga-tristeza)という別名もあります。

ブラジル人の人生が垣間見える?

400ある別名すべてを翻訳しようと思ったのですが、100個翻訳した時点で馬鹿馬鹿しくなってやめました。辞書に載っていない単語も多かったです。ここでは、別名をほんの少しだけ紹介します。名前を眺めているだけで、カシャッサを巡るブラジル人の人生が想像できてしまいます。

No 名前 意味
1 bagaceira 絞りかす
2 branca 白い、精製された
3 branquinha ホワイトちゃん
4 brasa 灼熱
5 danada 呪われた
6 dindinha おばあちゃん
7 donabranca ホワイトさん
8 elixir 妙薬(エリクサー)
9 esquentadeira 熱くさせるもの
10 lambada コップ一杯のピンガ
11 malvada 残酷な、悪魔
12 mariabranca ホワイトなマリア様
13 matabicho 鬼殺し
14 patrícia 貴族の
15 perigosa 危険な
16 purinha ピュアな
17 remédio お薬
18 restilo 最蒸留
19 teimosa 頑固むすめ
20 tirateima むち
21 trago ぐい飲み
22 plebe 下層民
23 ralé 最下層民
24 dengosa 気取った
25 mama 授乳
26 teta 乳房
27 ubre 乳房
28 gole 一気飲み
29 gota しずく
30 corrupção 退廃
31 defeito 悪癖
32 imperperfeição 欠陥
33 pecado
34 perversão 堕落
35 sestro 悪癖
36 veneno
ブラジルと共に発展したカシャッサの歴史
サトウキビから作られる蒸留酒、カシャッサはブラジルの代表的なお酒です。その起源には、色々な説がありますが、ポルトガル人がマデイラ島で行っていたサトウキビ栽培と蒸留技術をブラジルに持ち込んだのが起源であると考えるのが順当です。ある歴史家によると、カシャ...