この記事では、これからポルトガル語を勉強しようと考えている人に少しでも参考になるような経験談をご紹介します。
筆者は、ブラジルに来る前に英語とインドネシア語を集中的に勉強した経験がありました。その経験から、語学というものは共通する効率的な学習のパターンがあると感じました。ブラジルに来る前はポルトガル語が全く話せなかったのですが、そのパターンで学習した結果、三ヵ月くらいで日常会話ができるようになりました。
目新しい学習法ではないですが、いかにして三カ月でポルトガル語の日常会話を話せるようになったのかをご紹介いたします。
1.とにかくブラジル人と話をしてみる
ポルトガル語を勉強しようと思い立って、まず手を付けたのが、ブラジル人のポルトガル語教師探しです。
とりあえずGoogleで「portuguese Skype lessons」と検索したらスカイプでポルトガル語を教えてくれる先生がみつかりました。レッスンをお願いしたのは、ミナスジェライス州在住の個人教師で、授業料は1時間当たり1,500円程度と非常にリーズナブルでした。授業料の支払いは、決済サービスのPaypalを利用しました。最近では、日本語のサイトでも「Cafetalk」等がポルトガル語のオンラインレッスンを提供しています。
最初のうちは、ポルトガル語が全く分からないので、「元気ですか?」「元気です」「あなたの名前は何ですか?」といった超初歩の会話から始めます。子供みたいな幼稚な会話しかできないのですが、それでも直接ブラジル人の先生に教わると楽しいです。「話したことが相手に通じた!」という喜びは語学学習において重要なエネルギー源になります。
「ブラジル人講師のマンツーマンレッスンはお金がかかるし、最初は本屋で初級テキストを買ってきて勉強すればいいかな」とも考えたのですが、結果として最初からブラジル人講師について勉強したのはよかったと思いました。
最初からテキストで独学してもいいのですが、テキストはどうしても退屈なので、モチベーションが長続きしないのです。
定期的にブラジル人の先生と話す機会があれば、それがエネルギーになって、テキストでの独学の方もはかどるという好循環が生まれます。楽しく学べることが語学上達の秘訣だと思います。疑問が生じたときは、「次のレッスンの時に先生に聞こう!」と思えるのは心強いことだと思います。
語学に苦手意識を持つ日本人が多いのは、テキスト中心の一方的な学習から入ることが原因の一つなのではないかと思います。テキスト中心の勉強は、例えるならばバスケットボールで試合をせずにドリブルやパスの練習だけしているようなイメージでしょうか。基礎練習は大事ですが、試合が楽しいからこそ基礎練習も続けられますよね。
忍者の秘密特訓という有名な話があります。
忍者たちは「スパイ」として活動するために、日々の身体訓練を怠らなかったといいます。その中に「麻の苗木を毎朝飛び越える」という訓練があります。
「麻」は成長が早い植物で、3〜4ヶ月で3mほどに成長するそうです。ということは、1日でだいたい3cm程成長しているわけです。忍者たちはこの「麻」を地面に植え、その上を毎日ジャンプしたそうです。次の日も、その次の日も麻をジャンプします。
1日3cmずつ成長していくので、1日目は3cm、2日目は6cm、3日目は9cm・・・と、毎日麻の木を飛び越えるだけでジャンプ力が1日3cmずつ上がっていき、1週間で21cm、1ヶ月(30日)で90cm、3〜4ヵ月で3mもジャンプできるようになっている・・・というわけです。忍者の秘密特訓
独学で外国語を習得しようとするのは、忍者がジャンプのフォームを書物のみで一生懸命勉強するというのに似ています。正しいフォームの勉強は重要ですが、まずはジャンプしてみないと上達しません。
というわけで、ポルトガル語上達の第一歩は、まずブラジル人の先生をつくることからはじめるべきだと思います。
ついでながら、ブラジル人には、こちらが一生懸命ポルトガル語で話そうとすると、親身に付き合ってくれる人が多いです。国によっては、カタコトの外国語に面倒そうな顔をされたり、英語に切り替えてきたりする人の多い国もありますが、ブラジル人は優しい人が多いので、語学学習者にとってはとても良い国だと思います。
2.とにかく語彙を増やす
外国語を話す時には、文法が間違っていても単語を並べれば何とか意思の疎通ができますし、基本的な語彙さえ押さえておけば、分からない単語があっても意味を類推できます。いつまで経っても外国語が理解できない場合には、もしかしたら語彙力が低いのかもしれません。
語彙力は気合で伸ばすしかありません。とりあえず、基本単語集を一冊擦り切れるほど勉強すれば、その先はかなり楽になります。
語彙を増やす方法の一例
一例ですが私は、次の方法で語彙を増やしました。まず、単語集、大学ノートとペンを用意します。
単語集をめくって、知らない単語があればその単語を黙読しながら10回くらいノートに書き込みます。声に出しながら同じ単語を10回くらいノートに書くとより効果的です。あとは、ポルトガル語の例文を読んで、その単語がどのように使われているのか確認し、例文を音読します。これを、ひたすら続けます。
これをすると大学ノートに文字がびっしり書き込まれることになります。ノート一冊終えると、なんだか達成感も味わえます。この作業を単語集一冊、三周くらいやります。
この作業と並行して、単語の発音を吹き込んだCDを繰り返し聴きます。通勤時間、家事の時間、ハミガキの時間など、何かをしながらついでに聴けば、無理なく続けられます。
語彙を増やすのに最適なテキスト
東洋書店
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動詞300と書いてありますが、会話文を覚えるだけで、1,000近くの単語を習得出来ます。私はこの本の例文をひたすら紙に写して体を使って覚えました。
「ポル語る講座」で語彙やフレーズを練習
ポルトガル語学習者ならご存知だと思いますが、ポルトガル語を紹介する「ポル語る.com」というウェブサイトがあります。
ウェブサイト上で無料で公開されている記事も役に立ちますが、ポルトガル語の語彙や会話フレーズをしっかり学習したい方には有料の講座もおすすめです。こちらの講座では、5分間程度の動画講座が100本提供されています。動画の音声は日本語なしの100%「ポルトガル語」ですが、字幕は「ポルトガル語」「日本語」「字幕なし」に切り替えることができます。また、全ての語彙、フレーズについてテキストも付いています。
各動画にはシチュエーション別のポルトガル語会話がついていますが、ブラジル人が使いそうな言い回しが沢山紹介されており、一般の参考書で勉強することは難しいネイティブが本当に使うフレーズに浸ることができます。
3.作文を添削してもらう
外国語を学び始めのころは語彙力が低いので、会話のキャッチボールがスムーズにできません。会話はリアルタイムなので、文法もめちゃくちゃになってしまいがちです。そこで、語彙力を増やし、文法力を上げるためにオススメしたいのが、作文と添削です。
どんなテーマでもいいので、辞書を引きながら作文して、それを先生に赤ペンで添削してもらうのです。ブラジルと日本の文化の違いを紹介すると、先生にも興味を持ってもらえるので一石二鳥です。事前に作文をしておけば、限られた授業時間を最大限に活用することもできます。
赤ペンで添削してもらった作文は、自宅で声に出して何度も読み返します。このような過程を経ることで、作文した内容がストーリーとして頭に残るので、効率的に語彙を増やすことができます。
結論:ポルトガル語の習得は三ヵ月あれば十分
筆者はブラジルで仕事を始める前、一ヵ月間日本でポルトガル語を勉強し、二ヵ月間サルバドールの語学学校でポルトガル語を勉強しました。勉強開始から三ヵ月後には、ブラジルの週刊誌Vejaをナナメ読みできるようになっていましたし、ブラジル人ともカタコトであれば会話できるようになっていました。別に自慢しようと思ってこの文章を書いているわけではなく、三ヵ月くらいあればブラジルで生活して仕事するには十分な語学力を身につけることもできるということを伝えるのが目的です。
筆者はインドネシア、ブラジルの2ヶ国に長期滞在したことがあります。奇遇なことに、どちらの国でも三井物産の研修生の方にお会いしました。三井物産には2年間の海外研修プログラムがあります。最初の一年間は語学研修をし、残りの一年間は語学力を活用してインターンをするというものです。彼らの話を聞くと、やはり一年間の語学研修は長いと言っていました。
語学学習のコアなところは三ヵ月もあれば完了してしまいます。語学は極めようと思ったらきりがありません。あまり長く勉強していると、題材がマニアックになっていきます。通訳や翻訳家でも目指しているなら別ですが、言語はあくまでもツールなので、それを仕事に活用できなければ段々と空しくなってきてしまいます。
語学学習だけ一年間やるよりは、三ヵ月くらいで短期集中的に勉強し、仕事を始めてしまった方が良いと思います。語学力は現地で生活していく中で伸ばしていくことができますからね。